テイクオフして、横に走り出せた。そこまでは順調だったのに、5メートルも進まないうちに波に置いていかれる。慌てて膝をパタパタさせてみても、板は進むどころか失速していく。振り返ると、後ろから来た人がスーッと自分を抜き去っていく——。アップスンでつまずく人は、ほぼ全員がこの光景を経験しています。悔しいですよね。でも安心してください。加速できない原因は運動神経でも体力でもありません。「板をどう踏むか」を勘違いしているだけなんです。この記事では、アップスンでスピードが出る物理的な原理から、やり方の3ステップ、そして「腕は振るのか振らないのか」という指導者ごとに真逆の答えが返ってくる問題まで、順番に片づけていきます。読み終わるころには、次の海で何を意識すればいいかが1つに絞れているはずです。
アップスンとは?スピードが出る本当の原理

アップスンとは、波のフェイスを上下に使いながら小さなターンを連続させ、自分でスピードを作っていくテクニックです。英語では Ups & Downs。日本では「アップス」「アップスンダウン」「アップスダウン」と、人によって呼び方がバラバラですが、指しているものは同じです。この記事では「アップスン」で統一します。
まず押さえてほしいのは、アップスンは横に進むための技ではないということ。結果として横に進みますが、動作そのものは徹底的に「上下」です。ここを取り違えている人が本当に多いんです。
アップスン・パンピング・トリムの違い
似た言葉が3つあります。ここを分けて理解しておくと、あとの話がスッと入ってきます。
| 名称 | やっていること | 目的 | 向いている波 |
|---|---|---|---|
| トリム | 板を斜めに置いて滑らせる。動かさない | 速い波を逃げ切る | 張った速い波 |
| パンピング | 小さめの上下動でパワーゾーンを外さない | スピードの維持 | トロい波・厚い波 |
| アップスン | 大きめの上下動でレールを入れ替える | スピードの獲得と次の技への助走 | フェイスが張っている波 |
実際の海では、この3つを1本の波の中で行き来します。速いセクションはトリムで逃げ、緩んだところでアップスンを入れ、また張ってきたらトリムに戻す。上手い人ほどこの切り替えが細かいんです。
なぜ上下動でスピードが増えるのか
「上に行って下に降りるだけで、なぜ速くなるの?」という疑問はもっともです。答えは2つあります。
1つめは位置エネルギーの再利用。ブランコと同じ原理です。ブランコで一番低い位置に来た瞬間に膝を曲げて沈み込み、上がるときに伸び上がると、どんどん振れ幅が大きくなりますよね。あれとまったく同じことを波の斜面でやっています。トップまで上げた体を、ボトムに向かって落としながら踏む。この落下エネルギーが推進力に変わります。
2つめはパワーゾーンの捕まえ直し。波の中で一番力があるのは、崩れている白波のすぐ横、フェイスが立ち上がっているエリアです。ここは水が上向きに動いています。上下動を繰り返すことで、板を常にこの上向きの水流の上に置き直せる。だから加速する。
逆に言うと、パワーゾーンから外れた場所でいくら膝を屈伸しても、水が力を返してくれないので進みません。「アップスンしてるのに進まない」人の半分は、動作以前にポジションがずれています。波のどこに何があるのかは波の部位と名前を図解した記事で確認しておくと、この先の説明が一気に立体的になりますよ。
アップスンが効く場面・効かない場面
アップスンは万能ではありません。使いどころを間違えると、むしろ遅くなります。
| 場面 | アップスン | 理由 |
|---|---|---|
| フェイスが緩くて置いていかれそう | ◎ 使う | 自力でスピードを作る必要がある |
| ピークからズレて厚い場所にいる | ◎ 使う | パワーゾーンへ寄せ直せる |
| 次にリップやカットバックを狙う | ◎ 使う | 助走が足りないと技が決まらない |
| 速いセクションが前方に見えている | △ 最小限 | 上下すると距離をロスする。トリム優先 |
| 掘れてチューブになりかけている | × 使わない | ラインを崩すだけ。姿勢を低く保つ |
| ダンパー(一気に崩れる波) | × 使わない | そもそも走る面がない。早めにプルアウト |
ダンパーで無理に走ろうとして巻かれるくらいなら、潔く抜けたほうが体力も残ります。抜け方に不安がある人はプルアウトのやり方もあわせて読んでみてください。
アップスンのやり方3ステップ(目線→上半身→荷重抜重)

ここからが本題です。アップスンは3つの動作を順番につなげるだけ。順番が命なので、そこだけは崩さないでください。
STEP1|目線を行き先に投げる
すべての起点は目線です。トップに上がりたいなら、上がりたい波の一点を見る。ボトムに降りたいなら、降りたい場所を見る。人間の体は、見た方向に自然と胸が向き、胸が向いた方向に体重が乗るようにできています。
初心者に圧倒的に多いのが足元を見てしまうこと。板の上に立てているか不安だから、つい下を向く。すると胸が下を向き、体重が真下に落ちて、板はただ沈むだけになります。怖くても、視線は最低でも板2枚分先へ。それだけで進み方が変わります。
目安として、視線は常に0.5〜1秒後に自分がいる場所に置いてください。今いる場所を見ている時点で、動作は1テンポ遅れています。
STEP2|上半身でリードする
目線が決まったら、胸とヘソをその方向にひねります。ポイントは肩から先に回さないこと。肩だけ回すと上半身が起き上がり、足裏の圧が抜けます。「みぞおちから先に向ける」くらいのイメージが近いです。
このとき前腕は体の近くに置いたまま。脇を軽く締めて、手のひらを下向きに。腕が体から離れるほど遠心力で上体が起きてしまい、踏む力が抜けていきます。
そしてもう1つ、地味ですが効くのが後ろ足の膝を内側に入れること。ガニ股のままだと、いくら踏んでもレールが入りません。膝頭を板のセンターライン方向に絞り込むだけで、同じ踏み込み量でも板の反応が明らかに速くなります。
STEP3|荷重と抜重を「真下」に
ここが一番の核心です。踏む方向は真下。横ではありません。
イメージしやすい言い換えをします。後ろ足の下に体重計が置いてあると思ってください。その針をどれだけ大きく振れるか、それがアップスンの加速量です。腕をどれだけ振り回しても、この針は動きません。上に伸び上がったぶん、次に真下へ落とす。この上下の落差が大きいほど、板は前に出ます。
タイミングは「ボトムで踏む・トップで抜く」。斜面を降りきる直前に一番強く踏み込み、トップに向かって伸び上がりながら圧を抜いていく。踏むのは一瞬でいいんです。ずっと踏み続けると板が刺さって失速します。
| 目線 | 上半身 | 足・膝 | レール | |
|---|---|---|---|---|
| アップ(上がる) | トップの一点 | 波側へひねる | ゆっくり伸ばす | 波側に入れる |
| 切り返し | 進行方向の先 | ニュートラル | 伸びきる直前で止める | フラットへ |
| ダウン(降りる) | ボトムの着地点 | 進行方向へ戻す | 素早く曲げて沈む | 逆側に切り替える |
| 踏み込み | 次のトップ | 前傾を深く | 真下へ最大荷重 | 再び波側へ |
1サイクルの目安は1〜2秒。腹〜胸サイズの波なら、1本の波で3〜6サイクル入れば十分です。それ以上刻むと、後述する「パンパン病」になります。
なお、そもそも横に走り出せていない段階の人は、アップスンより先にやることがあります。サーフィンで横に走るコツを先に読んでから戻ってきてください。順番を飛ばすと遠回りになります。
「腕は振る?振らない?」問題に決着をつける
アップスンを調べていると、必ずぶつかる矛盾があります。あるサイトは「腕を回してアシストしよう」と書き、別のプロコーチは「腕は絶対に振るな」と断言している。どっちを信じればいいのか、混乱しますよね。ここを整理しないまま海に入ると、練習のたびに正解が変わって迷子になります。
なぜ指導が真っ二つに割れるのか
結論から言うと、両者は違う段階の人に、違う目的で話しています。
「腕を振れ」派が本当に伝えたいのは、腕の力で板を進めろということではありません。体幹のひねりを起こすきっかけとして腕を使え、という意味です。体が固まって棒立ちになっている人に「胸をひねって」と言っても伝わらない。だから「腕を回して」と言い換えている。つまりこれは初期の導入用の言葉なんです。
一方の「腕を振るな」派は、そこそこ走れるようになった人向けです。腕を横に振ると上体が起き、足裏の圧が抜け、さらにターンのタイミングまでズレる。中級手前で伸び悩む人の典型的な原因がまさにこれ。だから「固めろ」と言う。
どちらも正しい。ただし賞味期限が違うのです。
レベル別・板別の使い分け早見表
| あなたの状態 | 腕の扱い | 意識するワード |
|---|---|---|
| 横に走れるが上下動の感覚がゼロ | 大きく回してOK | 「腕で胸を連れていく」 |
| 上下動はできるが加速しない | 脇を締めて縮める | 「腕を止めて足で踏む」 |
| 加速はするが板がバタつく | 完全に固定 | 「両手を胸の高さで静止」 |
| 技につなげたい | 上下方向のみ動かす | 「ボールを下に押さえ込む」 |
| ロングボード・ミッドレングス | やや大きめでも可 | 「重い板は反動も使う」 |
| ショートボード | 小さく・低く | 「腕より前傾を深く」 |
実務的な落としどころを1つ挙げるなら、「腕は左右ではなく上下に動く」と覚えてください。トップ選手のアップスンをスロー再生すると、腕が振れているように見えますが、あれは深く前傾しているせいで板に対して横に見えるだけ。肩から見れば、腕は膝の屈伸に連れられて上下しています。
陸でできる確認方法があります。まっすぐ立って腕を大きく横に振ってみてください。次に、深くお辞儀をした姿勢で同じように振ってみる。振れませんよね。上下にしか動かない。上級者が言う「振る」はこの状態の話なんです。
ありがちな失敗5つと直し方【症状別診断表】

まずは診断表で自分の症状を見つけてください。そのあと該当する項目だけ読めば十分です。
| 症状 | 本当の原因 | 処方 |
|---|---|---|
| 動いているのに全然進まない | 腕振りだけで足が踏めていない | 腕を胸の前で固定して、膝だけで1本乗る |
| 下まで降りると波に置いていかれる | ボトムに降りすぎ | フェイスの下1/3で折り返す |
| そもそもターンに入れない | 膝が伸びきっている | テイクオフ直後から膝を曲げて滑り出す |
| 板がガクガク横に暴れる | 板を横に振っている | 「真下に踏む」だけに意識を戻す |
| 頑張るほど遅くなる | 刻みすぎ(パンパン病) | 1サイクル1〜2秒までペースを落とす |
失敗1|腕振りだけになっている
最多の失敗です。上半身は必死に動いているのに、板の上の足はほぼ静止している。海の上からだと自分では気づけません。
直し方はシンプルで、1本まるごと腕を封印すること。両手を胸の前で軽く組んで、膝の曲げ伸ばしだけで走ってみてください。最初は不安定ですが、3〜4本も乗れば「あ、足で進むんだ」という感覚が入ってきます。この感覚が入った後で腕を解放すると、勝手に上下方向にだけ動くようになります。
失敗2|ボトムに降りすぎている
「アップスンだから上まで行って下まで降りるんでしょ」と、フェイスの端から端まで使ってしまうパターン。これをやると、降りきった瞬間に波のパワーゾーンから完全に外れ、置いていかれます。
加速目的のアップスンで使うのは、フェイスの中央から下寄りの、上下1/3ずつくらいの帯です。胸サイズの波なら、上下動の幅は体感で30〜50cm程度。想像よりずっと小さいはずです。大きく動くのはトップアクションにつなげるときだけ。
失敗3|膝が伸びきったまま滑り出している
テイクオフして立てた安心感で、つい膝がピンと伸びる。この状態からはどうやってもターンに入れません。曲げる余地がないので、荷重の作りようがないからです。
対策はテイクオフの着地点をあらかじめ「膝が曲がった状態」に設定すること。立ち上がりきらない、と決めておくんです。目安は膝の角度130〜150度くらい。深すぎず、いつでも沈み込める余白がある状態。これだけでターンの入口が生まれます。テイクオフ自体が不安定な人はパーリングを防ぐ記事から手をつけたほうが早いです。
失敗4|板を横に振ってしまう
サーフボードは、ノーズとテールが上下する形で動きます。左右に振るものではありません。横に振ろうとすると、レールが水を横から叩いてブレーキになります。
感覚をつかむには、陸で片足立ちになって、その場で真下に踏み込む動作を10回。踏むときに体が横にブレないかを確認します。海でも同じで、踏んだ足の真下に体の重心があるかだけをチェックしてください。
失敗5|刻みすぎる「パンパン病」
ある程度できるようになった人が必ず一度は通る道です。とにかく細かく、速く、パンパンと上下を刻む。本人は全力で加速しているつもりですが、外から見ると板は前に出ていません。
理由は明快で、1回の踏み込みに使える時間が短すぎるから。板が水を掴んで反発を返すには、それなりの時間が必要です。刻むほど1回あたりの圧が浅くなり、抵抗だけが増えます。
直すときは、いっそ回数を半分に減らすと決めてください。1本の波で6回やっていたなら3回に。その代わり、1回ずつ深く、長く踏む。多くの人が「減らしたほうが速い」という結果に驚きます。
そして、アップスンはあくまで次の技への助走です。何でもかんでもアップスンで横に進むクセがつくと、フェイスを広く使えないサーフィンになってしまいます。ある程度走れるようになったら、カットバックやオフザリップといった縦の動きも並行して練習するほうが、結果的にアップスンも上手くなります。
波質・ボード別のアップスン使い分け

ここは競合のハウツー記事ではほとんど語られない部分です。でも実際の海では、これを知っているかどうかで上達スピードが大きく変わります。
波質別|幅とテンポを変える
| 波質 | 上下動の幅 | テンポ | 意識するポイント |
|---|---|---|---|
| トロい・厚い波 | 小さめ(20〜30cm) | やや速め | パワーゾーンを外さない。実質パンピング |
| 張った腹〜胸 | 標準(30〜50cm) | 1〜2秒/回 | 教科書どおりのアップスンが一番効く |
| 掘れる・速い波 | 最小限 | 1〜2回だけ | まずトリムで前へ。緩んだ瞬間だけ入れる |
| 面がザワついた風波 | 小さめ | ゆっくり | 刻むとバタつく。1回を深く長く |
| 頭オーバー | ほぼ不要 | — | 斜面の落差だけで十分速い。姿勢維持を優先 |
覚え方はひとつ。波が力をくれない日ほど、動きは小さく細かく。波が力をくれる日ほど、動きは大きくゆっくり。逆をやっている人が本当に多いんです。トロい日に大振りして沈み、良い日に刻んでバタつく。
その日の波が自分にとってどのランクなのかを判断できないと、この使い分けは機能しません。サイズ表記の読み方に自信がない人は波のサイズ表記の読み方を先に押さえておくと、海に着いた時点で作戦が立てられるようになりますよ。
ボード別|同じ動作では通用しない
| ボード | アップスンの効き | 動作の調整 |
|---|---|---|
| ショートボード | ◎ 最も効く | 前傾を深く。腕は小さく。テールを踏む |
| ファンボード | ○ 効く | 踏む位置をやや前へ。動作は大きめに |
| ミッドレングス | △ 部分的 | 刻まず、大きく1〜2回。トリム主体 |
| ロングボード | △ 別物 | 上下動より前後の重心移動で加速する |
| ソフトボード | × ほぼ効かない | 浮力が強く沈まない。まず横に走る練習を |
ここは誤解が多いところなので、はっきり書きます。スクールのソフトボードでアップスンが効かないのは、あなたの技術のせいではありません。浮力が大きすぎてレールが刺さらないので、物理的に上下動が推進力に変換されにくいんです。ソフトボードの段階では、無理にアップスンを追いかけず、まっすぐ走る・横に走るの精度を上げるほうが100倍効率的です。
ロングボードは加速の方法自体が違います。上下ではなく、前後にステップして重心を移すことでスピードを作る。詳しくはクロスステップのやり方やロングボード入門を参照してください。自分の板の浮力が適正かどうかが怪しい人は、サーフボードの適正浮力で一度計算し直しておくと、そもそもの前提が整います。
陸トレ・サーフスケートでの練習メニュー

アップスンは、海だけで習得しようとすると時間がかかります。理由は単純で、1回の海で実際にアップスンを試せるのはせいぜい10〜20回だから。週1サーファーなら年間で1,000回に届きません。一方、陸トレなら1セッションで数百回反復できます。
サーフスケート|最も再現度が高い
フロントトラックが大きく可動するサーフスケートは、アップスンの動きをほぼそのまま再現できます。押さずに進む「プッシュなし走行」ができるようになれば、海での加速感覚はかなり近づきます。
やることは3つだけ。
①足だけで進む——腕を胸の前で組み、膝の屈伸だけで加速する。10メートル進めれば合格です。②S字を描く——地面に緩いS字ラインをイメージして、切り返しごとに真下へ踏む。③テンポを落とす——同じ距離を、より少ない回数で進む。これが海での「刻みすぎ」対策に直結します。
デッキの長さは、ショートボードの動きを再現したいなら32〜36インチあたりが目安。板選びで迷ったらサーフスケートおすすめ6選で特性の違いを確認してみてください。トラックの可動域が広いモデルほどアップスンの練習には向きますが、そのぶん最初は乗るのが難しくなります。
道具なしでできる自宅メニュー
サーフスケートを買う前でも、今夜からできることがあります。
| メニュー | 回数・時間 | 鍛えられる要素 |
|---|---|---|
| スタンスを取って屈伸 | 20回×2セット | 荷重抜重のリズム |
| 片足スクワット(後ろ足側) | 10回×2セット | 真下に踏む筋力 |
| 前傾キープで胸ひねり | 左右10回ずつ | 上半身リードの可動域 |
| 膝を内側に絞るキープ | 30秒×3 | レールを入れる感覚 |
| 鏡の前で腕を固定して屈伸 | 1分 | 腕が横に流れないかの確認 |
特に効くのが最後の「鏡の前で腕を固定して屈伸」。自分の腕が無意識に横へ流れているかどうかが、その場で分かります。多くの人がここで初めて自覚するんです。
4週間の練習プラン
| 週 | 陸で | 海で | クリア条件 |
|---|---|---|---|
| 1週目 | 自宅メニューを毎日 | 腕を組んで膝だけで走る | 上下している感覚が出る |
| 2週目 | サーフスケートでプッシュなし走行 | 1本につき3回だけ深く踏む | 踏んだ瞬間に前に出る |
| 3週目 | S字+テンポを落とす | 波質に合わせて幅を変える | トロい日でも走れる |
| 4週目 | 動画で自分を撮る | アップスンからカットバックへ | 助走として使えている |
週1でしか海に行けない人でも、この4週間で明確に変わります。限られた海時間の使い方についてはサーフィンは週1でも上達するで詳しく書いているので、あわせてどうぞ。
海での練習手順とセルフチェック
陸で感覚を作ったら、海での使い方です。ここでやりがちなのが「今日はアップスンを練習するぞ」と気合を入れて、全部の波で全部を意識しようとすること。人間の脳は、1回のライディングで1つのことしか修正できません。
1セッションのテーマは1つだけ
おすすめの進め方はこうです。
最初の5本は「膝を曲げたまま滑り出す」だけ。加速は考えません。次の5本は「腕を胸の前で固定」だけ。その次の5本で「1本につき3回、深く踏む」。ここまでで15本。混んでいない日なら1セッションで届く本数です。
波数が確保できないポイントなら、白波(スープ)で数をこなすのも有効です。スープの上でも荷重抜重の練習はできますし、何より本数が桁違いに増えます。やり方はサーフィンのスープ練習法にまとめています。
動画セルフチェック5項目
アップスンは自分の感覚と実際の動きのズレが特に大きい技です。スマホでもいいので撮ってもらって、次の5項目だけ確認してください。
| チェック項目 | OKの状態 | NGなら直す場所 |
|---|---|---|
| 膝は常に曲がっているか | 伸びきる瞬間がない | テイクオフの着地姿勢 |
| 腕は横に流れていないか | 体の幅に収まっている | 前傾の深さ |
| 板は前に出ているか | 白波との距離が開く | 踏む方向(真下か) |
| 上下動の幅は適切か | フェイス中央±1/3以内 | 降りすぎ・上がりすぎ |
| 回数は多すぎないか | 1本3〜6回 | テンポを半分に |
特に「板は前に出ているか」は、白波との距離の変化を見るのが一番わかりやすい指標です。動いているのに白波が近づいてきているなら、その動作は加速に貢献していません。撮影と分析のコツはサーフィンは動画で上達するで詳しく解説しています。
バックサイドは別物として練習する
フロントサイドでアップスンができるようになっても、バックサイドでは全然進まない——これは普通のことです。背中側は波が見えず、胸のひねりも入れにくいので、難易度が明確に上がります。
バックサイドでは、胸をひねるより肩越しに進行方向を見ることを優先してください。首を回すと自然に上体がついてきます。また、前足への荷重をフロントサイドより気持ち多めに。詳しい克服手順はバックサイドが変わる練習法にまとめてあります。
よくある質問(FAQ)
Q1. アップスンができるようになるまで、どれくらいかかりますか?
横に走れる状態からスタートして、週1ペースなら3〜6か月が一般的な目安です。ただし「なんとなく上下できる」までなら1か月かからない人も多くいます。差が出るのは「実際に加速する」段階で、ここは陸トレの有無で大きく変わります。サーフスケートを週2回15分やった人は、海だけの人より半分程度の期間で到達するケースが目立ちます。焦らず、まずは膝が伸びきらない状態を作るところから始めてください。
Q2. アップスンとパンピングは何が違うのですか?
動作は同じ上下動ですが、目的と幅が違います。アップスンはフェイスが張った波でスピードを「獲得」するために大きめに動くもの。パンピングはトロい波や厚い波でパワーゾーンを外さずスピードを「維持」するために小さめに動くものです。実際の海では明確に区別せず、波の状態に応じて幅とテンポを連続的に変えているのが実情です。厳密な用語の線引きより、「今この波はどれくらいの幅で動くべきか」を判断できるほうが実戦的です。
Q3. アップスンで腕は振るべきですか、振らないべきですか?
段階によって答えが変わります。上下動の感覚がまだない導入期は、体幹のひねりを引き出すきっかけとして腕を大きく回して構いません。一方、上下動はできるのに加速しない段階に来たら、腕は脇を締めて固定してください。腕が横に流れると上体が起き、足裏の圧が抜けて逆効果になります。最終的には「腕は左右ではなく上下に動く」という形に落ち着きます。指導者によって説明が真逆に見えるのは、想定している段階が違うからです。
Q4. ソフトボードやロングボードでもアップスンはできますか?
ソフトボードは浮力が大きくレールが刺さりにくいため、上下動が推進力に変換されにくく、ほとんど効きません。技術の問題ではなく道具の特性なので、この段階では横に走る精度を上げるほうが効率的です。ロングボードは加速の原理そのものが違い、上下動より前後のステップによる重心移動でスピードを作ります。ミッドレングスは刻まずに大きく1〜2回だけ入れるのが現実的です。板が長く浮力が大きいほど、アップスン以外の手段が有効になります。
Q5. アップスンしているのに、逆に遅くなってしまいます
原因はほぼ3つのどれかです。1つめは刻みすぎ。板が水を掴んで反発を返す前に次の動作へ移ると、抵抗だけが増えて減速します。回数を半分に減らして1回を深く長く踏んでください。2つめはボトムに降りすぎで、パワーゾーンから外れています。上下動はフェイス中央の上下3分の1ずつに収めましょう。3つめは板を横に振っていることで、レールが水を叩いてブレーキになります。「真下に踏む」だけに意識を戻すと改善します。
Q6. 1本の波でアップスンは何回くらい入れるものですか?
腹から胸サイズの波であれば、1本あたり3〜6回が目安です。1サイクルにかける時間は1〜2秒程度。これ以上細かく刻むと、多くの場合スピードは落ちます。逆に、頭サイズを超えて斜面の落差が十分にある波では、アップスンをほとんど入れなくても板は走ります。そういう日は姿勢の維持とライン取りに集中したほうが結果が良くなります。「回数を増やす」ではなく「必要な場所で必要な回数だけ」が上達の方向です。
Q7. アップスンの練習にサーフスケートは必要ですか?
必須ではありませんが、習得スピードには明確に差が出ます。海で1回のセッションに試せるアップスンはせいぜい10〜20回ですが、サーフスケートなら15分で数百回の反復ができます。特に週1回しか海に行けない人ほど効果が大きくなります。買わずに始めたい場合は、自宅でのスタンス屈伸20回、後ろ足の片足スクワット10回、前傾姿勢での胸ひねり左右10回を毎日行うだけでも、荷重抜重のリズムと可動域は作れます。
まとめ|アップスンは「振る技」ではなく「踏む技」
最後に、明日の海で持っていく要点だけ整理します。
- アップスンは横に振る技ではなく、真下に踏む技。加速するのは足であって腕ではない
- 動作の順番は目線→上半身→荷重抜重。足から動かすと板は付いてこない
- 上下動の幅はフェイス中央の上下3分の1ずつ。降りすぎるとパワーゾーンから外れる
- 1本あたり3〜6回、1サイクル1〜2秒。刻みすぎは減速の最大要因
- 腕の正解は段階で変わる。導入期は回してよく、加速期は固める
- 波が力をくれない日は小さく細かく、良い日は大きくゆっくり
- 陸トレは効く。週2回15分のサーフスケートが海10回分の反復に相当する
アップスンができるようになると、乗れる波の幅が一気に広がります。今まで「厚くて走れない」と見送っていた波が、急に楽しい1本に変わる。あの感覚を一度味わうと、海に行くのがもっと待ち遠しくなりますよ。
次のステップとして、加速したスピードを技に変えていきましょう。まずはカットバックのやり方でパワーゾーンに戻る動きを、そこからリエントリーやオフザリップへ。陸トレの道具選びで迷ったらサーフスケートおすすめ6選も参考にしてください。
次の海では、欲張らずに1つだけ。「膝を曲げたまま、真下に踏む」。これだけ持っていってください。板が前に押し出される、あの一瞬が来たら——もうアップスンは自分のものです。



















