「今日はムネ、たまにカタ」──波情報を開いて、こんな一行に戸惑ったことはありませんか?
サーフィンの波のサイズは、日本では体の部位で表されます。でも「胸」って結局何センチなんでしょう。「頭半」や「ダブル」となると、もっと分かりにくいですよね。
さらに海外のアプリを開くと「3ft」と出てきて、余計に混乱します。じつはこのサイズ表記、基準を知らないまま眺めていると、現地に着いて「思ってたより全然デカい…」となりがちなんです。
海から上がってきた人に「今日どうでした?」と聞いて「腰くらいかな」と返ってきても、その人が180cmなら話は変わります。表記は便利ですが、そのぶん曖昧さも抱えているんですね。
この記事では、スネからトリプルまでの表記をcmで整理します。そのうえでftとの換算、気象庁の波高予報とのズレ、波情報サイトごとの基準の違いまで一気に解説します。読み終える頃には、波情報のたった一行から現地の海がイメージできるようになりますよ。
この記事の内容
- 波のサイズ表記とは?日本が「体の部位」で表す理由
- スネからトリプルまで|波サイズ表記の早見表
- ftとの換算表|海外アプリの「3ft」は日本の何サイズ?
- 気象庁の波高予報とサーフィンのサイズが違う理由
- 波情報サイトでサイズ表記が違うのはなぜ?
- 「セット」「たまに」「ムネ肩」表記の読み方
- レベル別|自分に合う波サイズの見極め方
- よくある質問(FAQ)
- まとめ
波のサイズ表記とは?日本が「体の部位」で表す理由

まず大前提から整理しましょう。日本の波のサイズ表記は、「その波の高さが、立っている人の体のどこに当たるか」で表しています。
スネ、ヒザ、モモ、腰、腹、胸、肩、頭。この順番で大きくなっていきます。とてもアナログですが、慣れると驚くほど直感的なんです。
サイズはどこからどこまでを測っている?
測っているのは波のフェイス(面)の高さです。具体的には、波のトップ(一番高い部分)からボトム(波の付け根)までの垂直距離を指します。
ここで大事なのは、「海面からの高さ」ではないという点です。波は谷(トラフ)を作りながら盛り上がります。そのため、平らな海面から測るよりも、実際に滑る面はひとまわり大きくなります。
テイクオフの瞬間、あなたが見下ろすのはこのフェイスです。だから日本の表記は、サーファーの体感にかなり近い数字になっているんですね。
なぜ数字(cm)ではなく体の部位なのか
「50cmの波です」と言われても、正直ピンときません。でも「ヒザ」と言われたら、一瞬で映像が浮かびますよね。
波は刻一刻と変わります。1本ごとに高さも違います。そんな対象を数字で厳密に言い切るのは、そもそも無理があるんです。
だから幅のある「だいたいこのくらい」を、体という共通のものさしで共有する。この方法が日本のサーフシーンに定着しました。海から上がった人と「今日ムネくらいでしたね」と一言交わすだけで、状況が伝わります。この速さが最大の利点です。
「フェイス基準」が日本式のスタンダード
世界には波の裏側(バック)を基準にする文化もあります。代表がハワイです。この違いが後述する「ft換算のややこしさ」を生んでいます。
日本はフェイス基準。つまり乗る側から見た、一番大きく見える高さで言うのが基本です。まずはここを押さえておいてください。
スネからトリプルまで|波サイズ表記の早見表

ここからが本題です。身長170cmの人を基準に、各表記をcmへ換算した早見表を用意しました。手元に置いておくと、波情報の解像度が一気に上がりますよ。
| 表記 | 目安の高さ(170cm基準) | ざっくりした感覚 |
|---|---|---|
| スネ | 約30cm | ほぼフラット。ロング向き |
| ヒザ | 約45cm | 小波。白波練習に最適 |
| モモ | 約70cm | 初心者が一番練習しやすい |
| 腰 | 約95cm | ショートでも十分遊べる |
| 腹 | 約110cm | 掘れ方次第で難易度が変わる |
| 胸(ムネ) | 約125cm | 中級者が楽しい定番サイズ |
| 肩(カタ) | 約140cm | ゲッティングアウトに体力が要る |
| 頭 | 約170cm | ドルフィンスルー必須 |
| 頭半 | 約210〜250cm | 上級者向け。判断力が要る |
| ダブル | 約300〜340cm | 身長の2倍。限られた人だけ |
| トリプル | 約450〜500cm | 台風・大うねり時のみ |
頭・頭半・ダブル・トリプルの数え方
「頭」までは体の部位です。ところがそこから先は、人ひとりぶんを単位にした掛け算に切り替わります。
頭半は1.5人分、ダブルは2人分、トリプルは3人分。ここに「オーバーヘッド」という言い方も加わります。オーバーヘッドは頭を少し超えた状態を指し、頭半までいかない中間を埋める表現です。
ちなみにダブル以上が入るのは、日本では台風シーズンか冬の大きな低気圧のときが中心です。年間で数えるほどしかありません。夏の高波については土用波とは?夏の突然の高波とサーファーの心得も参考にしてください。
身長で30cm変わるという落とし穴
この表記の最大の弱点がここです。基準が「人の体」である以上、誰が言ったかで数字が動きます。
身長155cmの人の「頭」は155cm。身長185cmの人の「頭」は185cm。その差は30cmです。これは腰と胸ほどの開きに相当します。
だから海上がりの人に聞くときは、ひとこと添えるのがコツです。「サイズどうでした?」ではなく「テイクオフのとき、掘れてました?」と聞く。あるいは相手の体格を見ながら聞く。これだけで精度が上がります。
波情報サービスの場合は、たいてい身長170cm前後の成人男性を暗黙の基準にしています。上の早見表もそこに合わせてあります。
ftとの換算表|海外アプリの「3ft」は日本の何サイズ?

ここが一番つまずきやすいポイントです。海外系のアプリを使い始めた人が、ほぼ全員ハマります。
1ft=30.48cm、でも単純換算では読めない
まず単位の話から。1ft(フィート)は30.48cmです。計算上は3ftで約91cm、つまり腰サイズになります。
ところが実際にハワイの波情報で「3ft」と出ている日に現地へ行くと、頭サイズの波が割れています。3倍近い差です。何が起きているのでしょうか。
ハワイアンスケールという別のものさし
答えは基準の違いです。ハワイでは伝統的に波の背面(バック)を見て高さを言います。フェイスではありません。
波は前から見ると大きく、後ろから見ると小さく見えます。トラフのぶんが見えないからです。この差はおおよそ2倍前後になります。
これがハワイアンスケール(Hawaiian scale)と呼ばれるものです。「見栄を張らない」というローカルの美学から生まれた、とも言われています。
一方で、Surflineなどのグローバルサービスは近年フェイス基準の表記を採用しています。つまり同じ「ft」でも、どのサービスかで意味が変わるのです。
ft換算早見表(フェイス基準)
Surfline・Windy・Magicseaweed系のフェイス基準表記を、日本の体感表記に対応させたのが次の表です。
| ft表記(フェイス) | 高さ | 日本の表記 | ハワイアンスケールなら |
|---|---|---|---|
| 1ft | 約30cm | スネ | 0.5ft |
| 2ft | 約60cm | ヒザ〜モモ | 1ft |
| 3ft | 約90cm | 腰 | 1.5ft |
| 4ft | 約120cm | 腹〜胸 | 2ft |
| 5ft | 約150cm | 肩 | 2.5ft |
| 6ft | 約180cm | 頭 | 3ft |
| 8ft | 約240cm | 頭半 | 4ft |
| 10ft | 約300cm | ダブル | 5ft |
覚え方はシンプルです。フェイス基準のftは、日本の体感サイズをそのまま置き換えたもの。ハワイアンスケールの数字を見たら、頭の中で2倍してください。
海外トリップの計画を立てるときは、そのサイトがどちらの基準かを最初に確認しましょう。ここを間違えると、想定と現地が完全に食い違います。
気象庁の波高予報とサーフィンのサイズが違う理由
「明日の波高1.5m」と天気予報で聞いて、期待して海に行ったら腰くらいだった。そんな経験、ありませんか?
これは予報が外れたわけではありません。測っているものがそもそも別物なんです。
「有義波高」という統計値
気象庁が発表する波高は、有義波高(ゆうぎはこう)と呼ばれる値です。ある地点で観測した波のうち、高いほうから3分の1を取り出して平均した高さを指します。
ポイントは3つあります。まず、これは沖合の値であること。次に、割れる前のうねりの高さであること。そして、平均値なので個々の波はもっと高いことです。
つまり有義波高は「沖で船が受ける波」の話であって、「岸で割れるフェイス」の話ではないんですね。
沖の1.5mが岸で腰になることもある
うねりが岸に近づくと、海底の地形の影響を受けます。ここで大きく2つの方向にブレます。
ひとつは減衰です。湾の奥や岬の陰では、うねりが回り込むうちに力を失います。沖1.5mでも岸では腰程度、ということが普通に起こります。
もうひとつは増幅です。急に浅くなる地形(リーフやサンドバー)では、うねりが立ち上がってフェイスが有義波高を上回ります。同じ1.5mでも頭オーバーになる海岸があるわけです。
ここに周期が絡みます。同じ1.5mでも、周期6秒と周期13秒ではまるで別の波になります。詳しくはうねりの周期の見方|秒数でわかる良い波の見極め方で解説しています。うねりの入る向きも同じくらい重要で、うねりの向きとは?ポイント選びが変わる読み方ガイドと合わせて読むと精度が上がります。
波浪注意報が出たときの目安
気象庁は高波による災害のおそれがあるとき、波浪注意報・波浪警報を発表します。基準は地域ごとに異なりますが、多くの沿岸で注意報は有義波高2.5〜3m前後が目安です。
この数字が出ている日は、サーフィンのサイズでいえば頭オーバーからダブルに達することがあります。加えてカレントが強烈になります。
初心者・中級者は、注意報が出た時点で見送る判断でかまいません。台風のあとの海については台風後のサーフィンは危険?水質・波・地形の判断基準も確認しておくと安心です。
波情報サイトでサイズ表記が違うのはなぜ?

朝、複数のアプリを開いて「A社はムネ、B社は腰」と食い違っていた。これ、あるあるですよね。
どちらかが間違っているわけではありません。基準と観測タイミングが違うだけです。
サービスごとの傾向
| タイプ | 表記の特徴 | 読むときのコツ |
|---|---|---|
| 現地スタッフが目視で更新する国内サービス | 体感表記。更新時点のセット寄り | 更新時刻を必ず見る |
| ライブカメラ+コメント型 | 映像で自分の目でも確認できる | 人が映っていればサイズが掴める |
| 数値モデル中心の海外系 | ft・m。沖のうねり値がベース | フェイス基準かどうか要確認 |
国内サービスは人の目が入るぶん、体感に近い数字が出ます。ただし更新が1日数回なので、時間が経つと実際とズレます。
海外系はモデル計算なので24時間先まで滑らかに出ます。そのかわり、その海岸特有の地形効果は反映されにくいのが弱点です。
「甘め」「辛め」が生まれる仕組み
同じ海を見ていても、報告する人によって表記は変わります。理由は3つあります。
1つ目は、平均を言うかセットを言うか。平均を採れば小さめ、セットを採れば大きめになります。
2つ目は、報告者の身長。前述のとおり、ここだけで30cmの幅が出ます。
3つ目は、地域の文化です。湘南は控えめ(辛め)、千葉や茨城は素直、日本海側は大きめに言う傾向がある、という話をよく聞きます。あくまで感覚的なものですが、通うポイントの「クセ」は覚えておくと役立ちます。
ひとつに絞って自分の基準を作る
実用的な結論はこれです。メインで使うサービスを1つ決めて、そこと現地のズレを覚えること。
「このサイトが腰と言う日は、うちのポイントだとモモ」。この対応表が頭に入れば、他のサイトを見る必要はほとんどなくなります。
目安として、同じポイントに10回ほど通えば感覚がつかめます。行くたびに「表記」と「実際どうだったか」をスマホにメモしておくと早いですよ。
「セット」「たまに」「ムネ肩」表記の読み方
サイズ表記には、単語以外の情報がくっついています。ここを読めるかどうかで、現地での驚きがかなり減ります。
セットは平均ではなく最大に近い
セットとは、数分おきにまとまって入ってくる大きめの波の群れのことです。
「腰、セットたまにムネ」と書かれていたら、普段は腰、10分に1回くらい胸が来る、という意味になります。
危ないのは、小さい波だけを見て入ってしまうケースです。ゲッティングアウトの途中でセットに当たると、一気に押し戻されます。岸から最低5分は観察し、その日の最大を見てから入る。これが鉄則です。
「〜」と「たまに」の違い
この2つは似て非なるものです。
「モモ〜腰」は、その範囲の波がコンスタントに入っている状態。乗れる本数が多く、練習向きです。
「モモ、たまに腰」は、大半がモモで、腰はごく稀。腰を狙うと待ち時間が長くなります。
この差は、セッションの組み立てを変えます。前者なら数をこなす練習、後者なら1本を丁寧に狙う練習。同じ2時間でも使い方が違ってきますよね。
よく出てくる表記の一覧
| 表記 | 意味 |
|---|---|
| ムネ肩 | 胸と肩の中間。胸よりやや大きい |
| カタ頭 | 肩と頭の中間 |
| オーバーヘッド | 頭を超えた状態。頭半までは行かない |
| ムネセット肩 | 普段は胸、セットで肩 |
| ジャンクコンディション | 風でぐちゃぐちゃ。サイズはあっても乗りにくい |
| クローズアウト | 大きすぎ・崩れすぎでサーフィン不可 |
| フラット | 波なし。スネ未満 |
とくに注意したいのがジャンクです。サイズ表記だけ見て「ムネなら楽しそう」と出かけると、現地は風で海面がバタバタ、ということになります。サイズと同じくらい、風の欄を見る習慣をつけてください。
季節でサイズ表記の意味は変わる|日本の年間傾向
同じ「腰」という表記でも、7月の腰と1月の腰では中身がまるで違います。ここを知っておくと、予定の立て方が変わりますよ。
夏(6〜8月)|小さいけれど油断できない
夏の太平洋側は、基本的にフラット〜モモの日が多くなります。南寄りの風が吹く午後は、風波でモモから腰まで上がることもあります。
ただし夏には例外が2つあります。ひとつは台風のうねり。もうひとつが土用波です。前日までフラットだった海が、一晩で頭サイズになることがあります。
怖いのは、海水浴客で賑わうタイミングと重なる点です。サイズ表記が急に2段階上がった日は、迷わず慎重に判断してください。
秋(9〜11月)|1年で最もサイズが安定する
台風シーズンの後半から秋にかけては、周期の長い良質なうねりが届きます。表記でいうと腰から胸が中心。中級者にとって一番おいしい時期です。
水温もまだ高く、朝夕はオフショアが吹きやすい。同じ「胸」でも、この季節のものは形が整っていて乗りやすいことが多いです。
冬(12〜2月)|サイズは出るが風との勝負
冬は低気圧が発達し、肩から頭のサイズが増えます。数字だけ見れば魅力的です。
しかし北西の季節風が強く、ジャンクになりやすいのがこの季節。「頭」と書いてあっても、面がボロボロで乗れないという日が少なくありません。
冬こそサイズ欄より風欄を先に見る。これが失敗しないコツです。
春(3〜5月)|ムラが大きい端境期
春は冬型と夏型が入れ替わる時期です。日によってフラットと胸を行き来します。
南岸低気圧が通れば一気にサイズアップし、抜けたあとに良い波が残ります。表記の変化が最も激しい季節なので、こまめなチェックが効きます。
| 季節 | よくあるサイズ表記 | 注意したいこと |
|---|---|---|
| 夏 | フラット〜モモ | 台風・土用波で突然のサイズアップ |
| 秋 | 腰〜胸 | 1年で最も条件が揃いやすい |
| 冬 | 肩〜頭 | 風で面が崩れやすい |
| 春 | フラット〜胸 | 日ごとの振れ幅が大きい |
「腰」という2文字の裏に、こんなに季節差があるわけです。表記を読むときは、いま何月かも一緒に思い浮かべてみてください。
サイズと使うボードの関係
もうひとつ、表記を読むうえで見落としがちなのが道具との相性です。
スネ〜ヒザの日にショートボードを持って行っても、ほとんど走りません。逆に頭サイズの日にロングボードだと、ゲッティングアウトで消耗します。
ざっくり言うと、ヒザ〜腰はロングやミッドレングス、腰〜頭はショートが得意領域です。浮力の考え方はサーフボードの適正浮力|リッター計算と目安早見表で詳しく整理しています。
サイズ表記を見て「今日はどっちの板か」を決められるようになると、1回のセッションで乗れる本数がはっきり増えますよ。
現地で自分でサイズを見積もる3つの物差し
最終的に一番役に立つのは、他人の表記ではなく自分の目です。ここでは、岸に立ったまま使える3つの物差しを紹介します。
物差し1|入っているサーファーと比べる
最も確実な方法です。波待ちしているサーファーの位置に、うねりが来た瞬間を見てください。
座っている状態だと、水面から頭までは40〜50cm程度。うねりが通過するとき、その人が完全に見えなくなればフェイスは頭サイズ以上あります。
テイクオフの瞬間も分かりやすいポイントです。立ち上がった人の膝あたりまで波のトップが来ていれば腰前後。腰まで来ていれば胸前後、と考えられます。
コツは、乗っている人ではなく波の後ろにいる人を見ること。乗っている人は波の下にいるので、大きさを読み違えやすいんです。
物差し2|ボードの長さを基準にする
ボードは長さが決まっているので、優秀な定規になります。
ショートボードは5’8″〜6’2″、つまり約175〜188cm。ミッドレングスは7’台で約215cm前後。ロングボードは9’で約274cmです。
テイクオフ直前、板が波のフェイスに対してどのくらいの割合を占めているか。板とフェイスがほぼ同じ長さに見えたら、その波は頭サイズと判断できます。
これは動画を撮って後から見返すのにも使えます。自分のセッションを振り返るとき、「今日は本当に胸だったのか」を検証できますよ。
物差し3|岸の構造物を使う
誰も入っていない朝一の海では、この方法が効きます。
テトラポッドは1個あたり高さ1.5〜2m級のものが多く、堤防の手すりは地面から約110cm。こうした固定物と、そこに当たる波しぶきの高さを比べます。
ただし、しぶきは実際の波高より大きく上がります。目安としてしぶきの高さの6割程度がフェイスの高さくらいに見ておくと、大きく外しません。
この3つを使い分けられるようになると、波情報を見なくても現地判断ができます。そうなると、混雑を避けた時間帯選びも自由にできるようになりますね。
記録をつけると精度が跳ね上がる
おすすめしたいのが、セッションごとのメモです。日付、波情報の表記、現地の実際、使った板、乗れた本数。これだけで十分です。
20回分ほど溜まると、傾向が見えてきます。「このポイントは表記よりワンサイズ小さい」「南うねりのときだけ表記どおり」といった具合です。
波のサイズ表記を読む力は、結局のところ経験の蓄積です。でも記録をつければ、その蓄積を何倍にも早められます。ぜひ今日から始めてみてください。
レベル別|自分に合う波サイズの見極め方
表記が読めるようになったら、次は「じゃあ自分は入っていいのか」です。ここを判断できると、海に行く回数そのものが増えます。
レベル別の目安サイズ
| レベル | 快適に楽しめる | チャレンジ域 | 見送り推奨 |
|---|---|---|---|
| 初めて〜数回 | スネ〜モモ | 腰 | 腹以上 |
| 白波で立てる | ヒザ〜腰 | 腹 | 胸以上 |
| 沖から乗れる | 腰〜胸 | 肩 | 頭以上 |
| ターンができる | 胸〜頭 | 頭半 | ダブル以上 |
| 上級 | 頭〜頭半 | ダブル | その日の判断次第 |
この表はあくまで出発点です。実際には、同じサイズでも日によって難易度がまったく変わります。
同じ「腰」でも難易度が変わる4つの条件
1つ目は周期です。周期が長いほど、同じサイズでもパワーが桁違いになります。周期6秒の腰と、周期14秒の腰は別のスポーツだと思ってください。
2つ目は掘れ方。ゆっくり崩れるメローな腰と、ドンと落ちるダンパー気味の腰では、テイクオフの難しさが違います。
3つ目はカレント。サイズが上がるほど流れは強くなります。腰でも流れが速い日は、パドルだけで体力を持っていかれます。
4つ目は混雑です。人が多いほど、乗れる本数は減り、接触リスクは上がります。夏の海水浴シーズンは特に注意が必要です。混雑期の立ち回りはお盆サーフィンの混雑対策とマナーにまとめています。
迷ったときの判断手順
現地に着いたら、着替える前に次の順で見ていきましょう。
まず5分間、何もせず海を眺めます。この間にセットが何回入るか、どのくらいの大きさかを確認します。
次に、入っている人を探します。人が波の中でどこまで見えるかで、実際のサイズが掴めます。腰まで浸かって立てる場所があるかも見えてきます。
最後に、自分が今日そこから安全に上がれるかを想像します。ここで少しでも「うーん」と思ったら、その感覚は正しいことが多いです。入らない判断も立派なスキルですよ。
小さすぎる日でも、やれることはあります。白波を使った反復練習は、サイズがない日ほど質が上がります。サーフィンのスープ練習法|白波から最短で上達するコツを読んでおくと、フラットな日も無駄になりません。
よくある質問(FAQ)
Q1. 波のサイズ表記は誰が決めているのですか?
公的な統一基準はありません。日本の体感表記は、サーファーの間で自然に定着した慣習です。波情報サービスの場合は、各社の現地スタッフや契約サーファーが目視で判断して発表しています。そのため会社ごと、担当者ごとに微妙な差が生まれます。国際的にもISOのような規格は存在せず、フェイス基準・バック基準といった流儀の違いが今も併存しているのが実情です。
Q2. 「頭」と「オーバーヘッド」はどう違いますか?
「頭」は波のトップがちょうど頭の高さに来る状態で、170cm前後が目安です。「オーバーヘッド」はそれを超えた状態を指し、おおむね180〜200cm程度をイメージしてください。さらに大きくなると「頭半」(1.5人分、約210〜250cm)へ移ります。つまりオーバーヘッドは、頭と頭半の間を埋める表現だと考えると分かりやすいです。実際の会話では「頭オーバー」と略されることも多くあります。
Q3. 天気予報の「波の高さ1m」ならサーフィンできますか?
できる日もあれば、フラットに近い日もあります。天気予報の値は沖合の有義波高で、岸で割れるフェイスの高さではないからです。周期が短い(6秒前後)風波の1mは、岸に届くころにはヒザ程度まで落ちることがあります。逆に周期12秒以上のうねりの1mなら、腰から胸まで立ち上がるポイントもあります。予報の数字は必ず周期とセットで見てください。
Q4. 身長が低いと波が大きく感じるのは気のせいですか?
気のせいではありません。体の部位を基準にする以上、身長155cmの人にとっての「頭」は155cm、185cmの人にとっては185cmです。同じ波でも、前者には「頭オーバー」、後者には「肩」に見えます。さらに体重が軽いほど波に流されやすく、体感的な怖さも増します。周りの表記をそのまま受け取らず、自分の体を基準に読み替える習慣をつけると安全です。
Q5. アプリによってサイズが違うとき、どれを信じればいいですか?
どれか1つを信じるのではなく、1つを基準に決めるのがおすすめです。メインのサービスを決め、そこの表記と現地の実際を毎回照らし合わせていきます。10回ほど通えば「この表記のときは実際こう」という自分だけの換算表ができあがります。加えてライブカメラがあるポイントなら、映っている人の体との比較で確認するのが最も確実です。
Q6. 初心者はどのサイズまでなら入っていいですか?
まだ自力で安定して立てない段階なら、ヒザ〜モモを基準にしてください。腰までは条件が穏やかなら候補に入りますが、腹以上は見送る判断で問題ありません。ただしサイズだけで決めないことが大切です。ヒザでも流れが強い日、白波が休みなく続く日、混雑している日は難しくなります。「乗れそうか」より先に「安全に岸へ戻れそうか」を見てください。
Q7. 「ダブル」や「トリプル」は実際に日本でもありますか?
あります。ただし頻度は限られます。太平洋側では大型台風のうねりが接近したとき、日本海側や北日本では冬の発達した低気圧のときが中心です。多くのポイントでは年に数回程度で、しかもその大半はクローズアウトして実際にはサーフィンできません。ダブル以上の日は経験と体力に加え、その海の地形を熟知していることが前提になります。表記でダブルを見かけたら、まずは岸から見学という選択が現実的です。
Q8. サイズ表記だけ見て海に行くのは危険ですか?
おすすめしません。サイズは判断材料のひとつにすぎないからです。同じ表記でも、風向き・風速・周期・潮回り・混雑度で難易度は大きく変わります。とくに風は重要で、オンショアが強い日は「胸」でも面がバラバラで乗りにくくなります。出発前は必ずサイズ・風・周期・潮の4点をセットで確認してください。そのうえで現地でも5分観察する。この二段構えが安全につながります。
まとめ
波のサイズ表記は、ただの記号ではありません。読めるようになると、家を出る前に現地の海が想像できるようになります。
- 日本の表記はフェイス(波の面)の高さを、体の部位で表したもの
- ヒザ約45cm、腰約95cm、胸約125cm、頭約170cmが170cm基準の目安
- 頭から先は人数の掛け算。頭半1.5人、ダブル2人、トリプル3人分
- フェイス基準のftは日本の表記とほぼ対応。ハワイアンスケールは約2倍で読む
- 気象庁の波高は沖の有義波高。岸のフェイスとは別物なので周期と合わせて見る
- サービスごとの表記のクセは、通って自分の換算表を作るのが一番早い
そして最後にもうひとつ。表記はあくまで出発点です。同じ「腰」でも、周期・掘れ方・カレント・混雑で難易度は大きく変わります。数字を鵜呑みにせず、現地で5分眺める時間をぜひ確保してください。
波のサイズをもっと深く読み解きたい人は、うねりの周期の見方とうねりの向きの読み方もあわせてどうぞ。この3つが揃うと、波情報の見え方が変わります。
次に波情報を開いたとき、あの一行がちゃんと海の風景に変換されているはずです。いい波、当てにいきましょう。



















