秋が近づいて、ロンスプやシーガルに衣替えする季節になりましたね。久しぶりに袖を通した瞬間、「あれ、こんなに着にくかったっけ…」と格闘した経験はありませんか?力任せに引っ張った拍子に、爪が生地に食い込んでビリッ。買ったばかりの一着を初日で破ってしまった、なんて話は実は珍しくないんです。ウェットスーツが破れる場面の多くは、海の中ではなく着脱のときに起きています。逆に言えば、正しい手順さえ覚えれば生地を傷めません。しかも今までの半分の時間で着られるようになるんです。この記事では、足先から肩までの着る手順を部位単位で解説します。チェストジップなどタイプ別のコツ、濡れたままでもスルッと脱げる方法まで網羅しました。読み終わる頃には、あの着替えのストレスから解放されているはずですよ。
目次
- ウェットスーツが破れる原因の8割は着脱時にある
- ウェットスーツの着方|足先から肩までの正しい手順
- タイプ別の着方の注意点|チェストジップ・バックジップ・ノンジップ
- ウェットスーツの脱ぎ方|濡れたまま破らず脱ぐ手順
- 着脱が楽になる道具と裏技|スプレーの是非も検証
- やってはいけないNG行動5つ
- よくある質問(FAQ)
- まとめ
ウェットスーツが破れる原因の8割は着脱時にある
まず知っておいてほしいのは、ウェットスーツが傷む場面のほとんどは海の中ではない、ということです。波に揉まれても、リーフに軽く擦っても、意外と生地は耐えてくれます。ところが着替えのたった5分で、簡単に穴が開いてしまうんです。修理店に持ち込まれる破れの大半が、爪による裂けと着脱時の引っ張りすぎと言われています。なぜそんなことが起きるのか、生地の特性から見ていきましょう。
ネオプレーン生地は「面」に強く「点」に弱い
ウェットスーツの素材はネオプレーンと呼ばれる発泡ゴムです。スポンジ状の気泡がたくさん入っているから、あの保温力と伸縮性が生まれます。手のひら全体で押したり引いたりする「面」の力にはとても強い素材なんです。ところが、爪の先や指先など「点」で力が集中すると、あっけなく裂けます。イメージとしては食パンに近いですね。両手でそっと持てば崩れないのに、指先でつまむと簡単に穴が開く。着替えで焦って指先に力を込めた瞬間、まさにこれが起きています。
破れやすいのは膝裏・脇・首まわりの3か所
破れが集中する場所には、はっきり傾向があります。1位は膝裏からふくらはぎにかけて。足を通すときに一番力がかかる場所だからです。2位は脇から袖の付け根。腕を抜くときに引っ張られる部分ですね。3位は首まわりで、ここは生地が薄く作られているため特にデリケートです。この3か所は「今、自分は破れやすい場所を触っている」と意識するだけでも、事故率がぐっと下がりますよ。
秋の衣替えシーズンこそ事故が多い理由
9月から11月は、ロンスプ、シーガル、フルスーツへと着るものが切り替わっていく季節です。夏のタッパーやスプリングに比べて、袖も脚も長くなり、生地の面積が一気に増えます。つまり引っかかるポイントが倍増するわけです。しかも半年ぶりにクローゼットから出したスーツは、生地が少し硬くなっていることもあります。「夏の感覚」のまま勢いよく着ようとして、初日に破く。これが秋あるあるなんです。衣替えの最初の1回こそ、この後紹介する手順を丁寧になぞってみてください。
ウェットスーツの着方|足先から肩までの正しい手順
ここからが本題です。ウェットスーツの着方は、足先→膝→腰→腕→肩の順で下から積み上げていきます。そして全工程に共通する大原則がひとつ。それは「引かずに手繰る(たぐる)」です。生地を上に引っ張り上げるのではなく、たるみを少しずつ手前に送り込むイメージですね。この感覚さえつかめば、フルスーツでも5分かからず着られるようになります。
着る前の準備|体・爪・場所の3点チェック
いきなり足を突っ込む前に、30秒だけ準備をしましょう。まず体の汗や水気をタオルで軽く拭きます。濡れた肌はゴムに貼りつき、摩擦が何倍にもなるからです。次に手足の爪をチェック。長い爪や割れた爪は、それだけで凶器になります。爪切りを車に1本積んでおくと安心ですよ。最後に場所選び。砂の上で着替えると、砂粒が生地と肌の間に入り込み、ヤスリのように生地を削ります。駐車場ならレジャーシートや着替えマットを敷いて、その上で着替えましょう。
下半身|つま先を通したら「かかと」を最優先で出す
脚の裾を膝のあたりまで軽く裏返してから、片足を入れます。つま先はすんなり入りますが、必ずかかとで一度引っかかります。ここで裾を引っ張るのはNG。裾口を両手の指の腹で軽く広げて、かかとを先に外へ出してあげましょう。かかとさえ出れば、あとは膝下の生地を少しずつ手繰り上げるだけです。このとき持つのは生地の端ではなく、面全体。手のひらと指の腹で挟むように持つと、爪が立ちません。片脚が膝まで来たら、もう片方の脚も同じように膝まで。左右交互に、少しずつが合言葉です。膝パッドの位置が自分の膝のお皿に合っているかも、ここで確認しておきましょう。
腰まわり|股の隙間をゼロにしてから上半身へ
両脚が太ももまで上がったら、腰の工程です。ここで手を抜くと、あとで肩が上がらなくなります。太もも→お尻→股の順に、生地のたるみを下から送り込んでください。目安は、股の部分とスーツの間に隙間がなくなるまで。軽く屈伸したり、その場で小さくジャンプしたりすると、生地が体に馴染んでいきます。腰から下で全体の7割が決まると思ってください。ここが完璧なら、上半身は驚くほど楽になります。
腕と肩|腕を通したら天に向かって突き上げる
腕は片方ずつ通します。袖口に手を入れたら、袖の生地を反対の手で手繰りながら、肘、肩の順に送り込みましょう。手首まで通ったら、腕をまっすぐ天に突き上げてください。これだけで脇の生地がスッと上がり、肩まわりの窮屈さが消えます。両腕が入ったら、胸と背中のたるみを中央に寄せて、脇の下の余りをなくします。最後にジップを閉めて、首まわりを整えたら完成です。髪の長い方は、ジップに巻き込まないよう先に結んでおきましょうね。
着終わったら30秒の最終チェック
海に向かう前に、次の5点を確認してください。膝パッドが膝のお皿の真上に来ているか。股に隙間がないか。脇の下に生地の余りがないか。首の内側が折れ込んでいないか。ジップが最後まで閉まり、ベルクロが留まっているか。この30秒で、海の中での「なんか動きにくい」がほぼ消えます。パドルのしやすさが全然違うので、ぜひ習慣にしてみてください。
タイプ別の着方の注意点|チェストジップ・バックジップ・ノンジップ
下半身までの手順はどのタイプも共通ですが、上半身はジップの構造によってコツが変わります。自分のスーツのタイプに合わせて、ポイントを押さえておきましょう。タイプ選びそのものに迷っている方は「チェストジップとバックジップの違い|後悔しない選び方」も参考にしてくださいね。
バックジップ|一番着やすいが紐の扱いに注意
背中のジップを全開にできるので、開口部が広く、初心者でも一番着やすいタイプです。注意点はジップを閉めるときの紐(リーシュコード)の扱い。斜め上ではなく、背骨に沿って真上に引き上げるのがコツです。斜めに引くとジップが噛み、無理に動かすとレールごと壊れます。閉まりが悪いときは一度下まで戻して、背中の生地のたるみを左右に逃がしてから再挑戦してください。
チェストジップ|頭を入れる順番がすべて
胸元のフラップから着るチェストジップは、防水性が高い反面、頭を通す工程で戸惑う方が多いタイプです。手順は、両腕を通す→フラップを頭の上にかぶせる→首穴に頭を入れる、の順。よくある失敗は、先に頭を入れてしまい、腕が背中で絡まるパターンです。首穴に頭を通すときは、両手で首穴を広げながら、あごを引いてくぐるように。髪や耳が引っかかるときは、無理に押し込まず一度戻しましょう。慣れれば1分もかからなくなりますよ。
ノンジップ|開口部が狭いぶん「手繰り」が命
ジップレスとも呼ばれるノンジップは、水の浸入が最も少なく動きやすい上級者好みのタイプです。ただし開口部が狭いので、着脱難易度は最高クラス。首まわりの生地を大きく広げて着ますが、このとき指を立てて広げると首の薄い生地が一発で裂けます。必ず指の腹で、面で広げること。開口部の生地は他より柔らかく作られているので、丁寧に扱えばちゃんと伸びてくれます。
| タイプ | 着やすさ | 防水性 | 着るときの最重要ポイント |
|---|---|---|---|
| バックジップ | ◎ | △ | 紐は背骨に沿って真上に引く |
| チェストジップ | ○ | ○ | 腕→フラップ→頭の順番を守る |
| ノンジップ | △ | ◎ | 首まわりは指の腹で面で広げる |
ウェットスーツの脱ぎ方|濡れたまま破らず脱ぐ手順
波が良くて、やりすぎた…という日ほど、腕はパンパンで指先に力が入りませんよね。実は破れ事故は、着るときより脱ぐときのほうが起きやすいんです。疲れている上に、濡れた生地は肌に貼りついて数倍脱ぎにくい。だからこそ、脱ぎ方こそ手順で覚えておく価値があります。基本は着るときの逆、肩→腕→腰→足の順です。
上半身|肩を抜くときは「肘から」引き抜く
ジップを全開にしたら、まず肩の生地を左右とも肩の外側まで下ろします。次に片方の袖口を反対の手で押さえ、肘から先に引き抜きましょう。手首を直接引っ張ると、袖口の縫い目に全力がかかって裂けやすいんです。肘さえ抜ければ、手はスルッとついてきます。片腕が抜けたら、もう片方も同じ要領で。このとき抜いた腕で袖を持つと、脇に負担をかけず楽に抜けますよ。
下半身|裏返しにロールしながら膝下まで一気に
上半身が抜けたら、腰から下は「裏返しながら丸めて下ろす」のが正解です。ずり下げるのではなく、生地を外側にロールしていくイメージですね。お腹→お尻→太ももと裏返していけば、摩擦がほとんどかからず膝下までストンと落ちます。最後に足を抜くときは、立ったままだとバランスを崩しがち。車や壁に軽くもたれるか、着替え用のバケツやマットの縁に座ると安全です。転んで手をついた拍子に、スーツを踏み破るのが典型的な事故パターンなので気をつけてください。
足首が抜けないときは「お湯」と「内折り」で解決
一番の難所は足首です。かかとが引っかかって抜けないとき、力任せに引っ張るのは絶対にやめましょう。おすすめは、足首の生地を内側に折り返してから、首元からぬるま湯を注ぐ方法です。内折りにした足首がお湯を受け止めて、ふくらはぎに水の層ができます。この状態で足を引くと、拍子抜けするほどスルッと抜けるんです。お湯は40度以下のぬるま湯にしてください。熱湯は生地の劣化と接着剥がれの原因になります。ポリタンクにお湯を用意しておく、いわゆる「お湯ポリ」は秋冬サーファーの定番装備ですよ。
着脱が楽になる道具と裏技|スプレーの是非も検証
手順を覚えたうえで道具を足すと、着脱はさらに楽になります。ただし世間で言われる裏技には、生地を傷めるリスクと隣り合わせのものもあるんです。ここでは定番の3つを、メリットと注意点セットで検証します。
ビニール袋|コスパ最強の摩擦カット術
足や手にビニール袋をかぶせてから通すだけで、摩擦が激減します。かかとや手首の引っかかりがなくなり、通過時間は体感で半分以下。コンビニ袋で十分ですが、薄いものはすぐ破れるので二重にするのがコツです。濡れた体で二度目の入水をするときにも効果絶大なので、車に数枚ストックしておきましょう。コストほぼゼロで一番効果が大きい、まず試すべき裏技です。
インナー|滑りと防寒を同時に解決
ツルツルした素材のサーフインナーを着ると、生地が肌に貼りつかず、着脱全体がスムーズになります。秋冬は防寒も兼ねられるので一石二鳥ですね。特に起毛インナーは、フルスーツシーズンの快適さが別物になります。選び方は「ウェットスーツインナー完全ガイド」で詳しく解説しているので、衣替えのタイミングで揃えておくのがおすすめです。
シリコンスプレーは生地を傷める?素材別の結論
「するするスプレー」に代表される潤滑スプレーには、生地を傷めるという説があります。結論から言うと、ウェットスーツ専用の水溶性タイプを、ジャージ地の裏地に少量使う分には問題ありません。実際に破損の原因になるのは、工業用シリコンスプレーなど溶剤入りの製品を使ったケースです。溶剤がネオプレーンの接着面を侵し、剥離を早めてしまいます。また、スキン(ラバー)素材や起毛裏地への使用は、専用品でも避けたほうが無難です。スキン面は表面がデリケートで変質しやすく、起毛は液剤を吸い込んで保温力が落ちるからです。使うなら「専用品を、ジャージ面に、サッとひと吹き」まで。かけすぎるとボードに付着して滑る原因にもなるので、量は控えめにしましょう。
| 道具 | 効果 | コスト | 注意点 |
|---|---|---|---|
| ビニール袋 | 手足の通過が劇的に楽 | ほぼ0円 | 薄手は二重にする |
| サーフインナー | 全身の滑り+防寒 | 2,000〜6,000円 | サイズはジャストを選ぶ |
| 専用潤滑スプレー | 袖口・裾口の引っかかり解消 | 1,500円前後 | ジャージ面のみ・少量厳守 |
| お湯(ポリタンク) | 脱ぎの時短と防寒 | 数百円 | 40度以下のぬるま湯で |
やってはいけないNG行動5つ
最後に、これだけは避けてほしいNG行動をまとめておきます。どれも「ついやってしまう」ものばかりですが、スーツの寿命を確実に縮める行動です。
1. 爪を立てて生地をつかむ。破れ原因の王様です。生地は常に指の腹と手のひらで、面で扱いましょう。2. 砂の上で直接着替える。砂粒は生地と肌の間でヤスリになります。マットかシートを必ず敷いてください。3. 袖口・裾口だけを持って引っ張り上げる。端の縫い目に力が集中して裂けます。持つのは端ではなく、生地の面です。4. 熱湯をかける。寒い日ほどやりたくなりますが、接着剤が剥がれ、生地の劣化が一気に進みます。お湯は必ず40度以下に。5. 濡れたまま車内に放置する。着脱そのものではありませんが、生地が硬くなり、次回の着にくさと破れやすさに直結します。帰宅後の正しいケアは「ウェットスーツの洗い方と保管術」を参考にしてください。
もし破ってしまっても、慌てなくて大丈夫です。小さな裂けなら、ウェットボンドで自分で補修できます。手順は「ウェットスーツの修理方法|破れ・剥がれを自分で直す完全ガイド」で写真付きで解説しています。応急処置が早いほど傷は広がらないので、ボンドは1本常備しておくと安心ですよ。
よくある質問(FAQ)
ウェットスーツを着るのにどれくらい時間がかかりますか?
慣れた人なら、フルスーツでも3〜5分が目安です。初めてだと15分以上かかることも珍しくありませんが、それは普通のことなので安心してください。時間を縮めるポイントは、下半身に時間の7割を使うこと。腰までを完璧に上げれば、上半身は一気に楽になります。ビニール袋を使えば、初心者でも5分台は十分狙えますよ。
きつくて着られないのはサイズが合っていないのでしょうか?
着るのが大変でも、着てしまえば苦しくないなら、それは正しいサイズです。ウェットスーツは保温のため、肌に密着するジャストサイズが正解だからです。ただし、着た状態で深呼吸ができない、肩が回らない、股や脇に隙間が残る場合はサイズ違いの可能性があります。試着の段階で、着心地だけでなく「着脱のしやすさ」も確認しておくと失敗が減ります。
着るときに破いてしまったら、その日は海に入れませんか?
小さな裂けや穴なら、ウェットボンドで応急処置をすれば入水できます。塗って乾かす時間は15〜30分ほど。破れたまま入ると、水圧と動きで裂け目が一気に広がるので、そのまま入るのはおすすめしません。縫い目の剥離や5cmを超える裂けは、自己補修より修理店に出したほうが結果的に安く済むことが多いです。
濡れたウェットスーツを翌日また着るコツはありますか?
濡れて冷たいスーツは、乾いたときの数倍着にくくなります。コツは3つ。前夜に風通しの良い場所で少しでも水を切っておくこと。着る直前に内側へぬるま湯を通して生地を柔らかくすること。そしてビニール袋を使って手足を通すことです。連日入るサーフトリップでは、替えのインナーを持っていくと不快感がかなり減りますよ。
ベビーオイルやワセリンを滑り剤に使ってもいいですか?
おすすめしません。油分はネオプレーンの劣化と接着面の剥離を早める可能性があるうえ、裏地に染み込んで臭いの原因にもなります。滑りを良くしたいなら、水溶性のウェットスーツ専用スプレーか、ツルツル素材のインナーを選びましょう。肌の擦れ対策なら、サーフィン用の水溶性アンチチェイフィングクリームという選択肢もあります。
まとめ|「引かずに手繰る」だけで着替えは変わる
ウェットスーツの着方・脱ぎ方のポイントを整理します。
- 破れの多くは着脱時に起きる。生地は「点」に弱いので爪を立てない
- 着る順番は足先→膝→腰→腕→肩。「引かずに手繰る」が大原則
- 下半身で全体の7割が決まる。股の隙間ゼロを目指す
- 脱ぐときは裏返しロール。足首はお湯と内折りでスルッと抜ける
- ビニール袋とインナーは積極活用。スプレーは専用品をジャージ面に少量だけ
着脱はサーフィンのたびに必ずやる動作です。だからこそ、一度正しい手順を体に入れてしまえば、この先ずっと効いてきます。浮いた時間と体力は、そのまま波に使えますからね。これからの季節に向けて、「秋のウェットスーツ選び方」と「ウェットスーツの洗い方と保管術」もあわせてチェックして、衣替えを万全にしておきましょう。次の週末は、スマートに着替えて誰より早く海に入っちゃいましょう!


















