夏に買った車中泊グッズをそのまま積んで、11月の房総に行った。夜中の2時、寒くて目が覚める。毛布を2枚重ねても、背中の鉄板から冷気が上がってくる。朝、車の後ろに掛けておいたウェットが板みたいに凍っていた。「何を買い足せば、冬もこのスタイルで通えるんだろう」。そう思って検索している方へ。
結論から言うと、冬の車中泊は夏の延長ではありません。寒さは我慢ではなく命に関わる問題で、電源がなければ電気毛布もお湯も何も回らない。そして濡れたウェットをどう扱うかというサーファー固有の悩みが、車中泊の記事ではほとんど扱われていません。
この記事では、寝床・電源・濡れ物・お湯・安全の5項目に絞って、装備の「選び方」を条件付きで整理します。寝袋は快適温度で、マットはR値で、ポータブル電源は電気毛布の消費電力から逆算したWhで選ぶ。最後に予算3万・7万・15万円の装備セットを比較表にしました。なお、暑さ・虫・日除けなど夏の話は夏の車中泊必需品ガイドにまとめてあるので、本記事は秋冬の要件に限定します。
目次
- 夏の車中泊装備がそのまま冬に通用しない3つの理由
- 寝床の選び方|寝袋の快適温度とマットの断熱(R値)
- 電源の選び方|電気毛布の消費電力からWhを逆算する
- 濡れ物対策|ウェットを車内に持ち込むときの結露・臭い・凍結
- お湯とシャワー|ポリタンク・給湯器・銭湯の使い分け
- 安全面の必須知識|一酸化炭素・エコノミークラス症候群・場所のルール
- 【比較表】予算別の装備セット(3万/7万/15万円)
- よくある質問(FAQ)
- まとめ:どれから揃えればいい?
夏の車中泊装備がそのまま冬に通用しない3つの理由
夏の車中泊で困るのは暑さと虫です。窓を開けて網戸をつけ、扇風機を回せばなんとかなります。冬はまったく別の問題が3つ同時にやってきます。この3つを頭に入れておくと、何にお金をかけるべきかが見えてきます。
理由1:車内温度は外気とほぼ同じまで下がる
エンジンを切った車は、断熱材のない鉄とガラスの箱です。日が落ちて3時間もすれば、車内は外気温プラス1〜2℃まで落ちます。湘南や千葉の1月なら、明け方の外気は0〜3℃。車内も同じと考えてください。日本海側や東北の海に行くなら、氷点下5℃以下を前提に装備を組む必要があります。
しかも寒さは上からより下から来ます。床の鉄板は外気に直接さらされているので、寝ている体の背中側から熱が奪われ続けるんです。毛布を上に何枚掛けても寒いのは、下の断熱が足りないから。これが「寝袋よりマットが先」と言われる理由です。
理由2:暖をとるにも湯を沸かすにも「電源」が要る
夏の車中泊で使う電気は、スマホの充電と扇風機くらい。モバイルバッテリーで足ります。冬は電気毛布、充電式湯たんぽ、場合によっては電気ケトルまで使いたくなる。一晩まかなうには、数百Wh単位のポータブル電源が必要になります。
「エンジンをかけて暖房すればいい」と思うかもしれません。でもアイドリングで一晩過ごすのは、騒音で周囲に迷惑がかかるうえ、燃料も減ります。雪が降る地域ではマフラーが雪で塞がれて排気ガスが車内に逆流し、一酸化炭素中毒で亡くなる事故が毎年起きています。冬の車中泊は「エンジンを切って寝る」が大前提です。
理由3:濡れたウェットが「凍る・臭う・車内を湿らせる」
これがサーファーだけの問題です。5mmのセミドライは、水を切っても1リットル近い水分を含んでいます。車内に持ち込めば、その水分が夜のうちに蒸発して窓ガラスにびっしり結露する。外に掛けておけば、氷点下の朝には凍ってゴワゴワになり、袖を通すのに10分かかります。
さらに、湿ったウェットを密閉空間に置くと、翌朝の車内は独特の臭いで満たされます。結露・臭い・凍結。この3つを同時に解決する運用が、冬の車中泊サーファーの必修科目です。詳しくは濡れ物対策の章で、脱水から翌朝の解凍まで手順で説明します。
寝床の選び方|寝袋の快適温度とマットの断熱(R値)

寝床にかけるお金が、冬の車中泊の快適さの7割を決めます。ここでは寝袋を「快適温度」で、マットを「R値」で選ぶ方法を、行き先の気温別に整理します。どちらもカタログに数字が書いてあるので、感覚ではなく数字で選べます。
寝袋は「快適温度」で選ぶ。「使用可能温度」で選ぶと凍える
寝袋のスペックには、たいてい2〜3種類の温度が書いてあります。「快適温度(コンフォート)」は、一般的な体格の人がリラックスして眠れる温度。「下限温度(リミット)」は、体を丸めてなんとか8時間耐えられる温度。さらに低い「極限温度」は、低体温症にならずに生き延びられる限界です。
店頭で目立つのは、一番低い数字。「-15℃対応」と大きく書いてあっても、快適温度は0℃前後というのはよくあります。選ぶときは必ず快適温度を見て、行き先の明け方の気温より5℃低いものを選んでください。湘南・千葉の真冬なら快適温度-5℃前後、日本海側なら-10℃前後が目安です。
素材は化繊かダウンか。化繊は濡れに強く、洗濯機で洗えて価格も1万円前後から。ダウンは同じ暖かさで半分の重さと容積になりますが、湿気に弱く、3万円前後します。車中泊は担いで歩かないので、収納サイズより濡れへの強さと洗いやすさを優先して化繊で十分です。濡れたウェットと同じ空間で寝る以上、湿気に強いことは大きなメリットになります。
マットはR値で選ぶ。冬はR値4以上、床の鉄板を甘く見ない
R値は断熱性能を示す数字で、大きいほど下からの冷気を遮ります。目安として、夏用は1〜2、3シーズンなら2〜4、冬用は4以上。車の床は鉄板の上に薄いカーペットがあるだけなので、テント泊より条件が悪いと考えてください。
R値は重ねると足し算できます。たとえば銀マット(R値約0.5〜1)の上に厚さ5cmのインフレーターマット(R値約2〜3)を敷けば、合計3〜4。さらに10cm厚の車中泊マット(R値約4〜6)なら単体で冬に届きます。手持ちの薄いマットを買い替えるより、銀マットを1枚足すほうが安く済むことも多いです。
シートの段差も見落としがちなポイント。フルフラットにしても凹凸が残る車種は、段差を埋めるだけで睡眠の質が変わります。車種別の相性はサーファーにおすすめの車と選び方で比較しているので、これから車を選ぶ方はそちらも参考にしてください。
| 行き先の明け方気温 | 寝袋の快適温度の目安 | マットの合計R値 | 補助アイテム |
|---|---|---|---|
| 5℃前後(11月の関東沿岸) | 0℃ | 3以上 | フリースブランケット |
| 0〜3℃(1〜2月の湘南・千葉) | -5℃ | 4以上 | 電気毛布か充電式湯たんぽ |
| -5℃以下(日本海側・東北) | -10℃ | 5以上 | 電気毛布+湯たんぽの併用 |
寝袋の中に着るもの。ウェットの下に着たインナーは脱ぐ
寝袋の性能は、中に何を着るかで変わります。綿のスウェットは汗を吸って冷えるので避けて、化繊かウールのベースレイヤーに、フリースを一枚。首まわりと足先が冷えるので、ネックウォーマーと厚手の靴下は必須です。
注意したいのが、海上がりにウェットの下に着ていたインナー。乾いているように見えても湿気を含んでいるので、そのまま寝ると体温を奪います。寝る用のインナーを別に1セット用意して、必ず着替えてから寝袋に入ってください。
電源の選び方|電気毛布の消費電力からWhを逆算する

ポータブル電源は冬の車中泊の心臓部です。でも「大は小を兼ねる」で1000Wh以上を買うと、8万円以上して重さも10kgを超えます。逆に安さで300Whを選ぶと、電気毛布が明け方に切れる。必要な容量は計算で出せるので、まず自分の使い方を数字にしてみましょう。
電気毛布は「強」で50W前後、「弱」なら20W前後
電気毛布の消費電力は、シングルの敷きタイプで最大40〜55W程度。これは「強」で運転し続けた場合の数字で、実際にはサーモスタットで入り切りを繰り返します。寝る前の1時間だけ「強」で温めて、寝てからは「中〜弱」に落とすと、平均の消費電力は20〜30Wに落ちます。
つまり一晩8時間の消費量は、強のまま50W×8時間=400Wh、弱運転なら25W×8時間=200Wh。同じ毛布でも、運転の仕方で必要な容量が2倍変わるということです。半身サイズの電気毛布なら、さらに3割ほど減ります。
計算式:消費電力(W)×使う時間(h)÷0.85=必要なWh
ポータブル電源は、内部のバッテリーからAC100Vに変換するときに10〜15%ほどロスが出ます。だから計算した消費量を0.85で割って、その値を「実際に使える容量」として見てください。電気毛布を弱で8時間なら、200Wh÷0.85=約235Wh。スマホ2台の充電(約30Wh)とLEDランタン(約10Wh)を足しても、300Whあれば足ります。
ここに電気ケトルを加えると話が変わります。1リットルのお湯を沸かすのに、1000W級のケトルで約6分。消費量は約100Whです。朝のコーヒーと海上がりのお湯で2回沸かすなら、200Whが上乗せ。電気毛布と合わせて500Wh級が現実的な下限になります。
| 使い方 | 一晩の消費量(目安) | ÷0.85後 | 選ぶ容量の目安 | 価格帯 |
|---|---|---|---|---|
| 電気毛布(弱)+スマホ充電 | 約240Wh | 約280Wh | 300〜400Wh | 2〜4万円 |
| 電気毛布(中)+ケトル1回 | 約400Wh | 約470Wh | 500〜600Wh | 4〜6万円 |
| 電気毛布2枚(2人)+ケトル2回 | 約700Wh | 約820Wh | 1000Wh前後 | 8〜12万円 |
| 上記+連泊(車で走行充電) | 毎日約500Wh | 約600Wh | 600Wh+走行充電ケーブル | 6〜8万円 |
低温でバッテリーは弱る。寝袋の足元に入れるくらいでいい
リチウムイオン電池は、0℃を下回ると出力が落ち、充電できなくなる製品もあります。リン酸鉄リチウム(LiFePO4)タイプは寿命が長く安全性も高いですが、低温に弱いのは同じです。冬の車内では、ポータブル電源を床に直置きせず、マットの上か寝袋の足元近くに置いてください。カタログの容量が出ないのは、たいてい寒さのせいです。
連泊するなら走行充電も考えましょう。シガーソケットからの充電は100W前後なので、海までの3時間の移動で300Wh程度回復します。遠征時の電源運用の全体像はサーフィン遠征の車内ガイドで詳しく書いています。
電源がなくてもできる暖のとり方
予算がない、あるいは電源を買う前に一度試したい。そんなときは充電式湯たんぽが優秀です。家で15分充電しておけば、寝袋の中で6〜8時間温かさが続きます。価格は3,000円前後。昔ながらのお湯を入れる湯たんぽも、海上がり用に沸かしたお湯を使い回せるので、サーファーには相性がいい。電気毛布ほどの安定感はありませんが、寝袋の快適温度が足りているなら十分に補えます。
濡れ物対策|ウェットを車内に持ち込むときの結露・臭い・凍結

この章が、この記事でいちばん伝えたい部分です。車中泊の記事はたくさんありますが、濡れた5mmのウェットと同じ空間で寝る人向けには書かれていません。結露・臭い・凍結を同時に抑える運用を、海から上がった直後から翌朝の入水まで、時系列で説明します。
海上がり直後:水を切る。ここで持ち込む水分が決まる
上がったらまず、着替え用のバケツにウェットを入れて、真水があれば軽くすすぎます。次にバケツの中で足踏みして水を絞り、腰から二つ折りにしてハンガーに掛けて5分だけ滴らせる。これだけで、含んでいた水分が半分以下になります。着替えの動線とバケツの選び方は着替えグッズ比較ガイドを参考にしてください。
さらに減らしたいなら、吸水性の高いマイクロファイバーの大判タオルでウェットを挟んで押す。洗濯機の脱水ができない以上、ここでの手間が夜の結露量にそのまま跳ね返ります。凍る夜は「外に干しておけば乾く」は通用しないので、この時点で乾かそうとしないのがコツです。
夜:車内に入れるなら密閉、外に置くなら凍る前提で
選択肢は2つ。車内に入れるか、外に置くか。車内に入れるなら、水分と臭いを閉じ込めるために防水のバッグか蓋付きバケツに密閉します。開けたまま置くと、1リットル近い水分が夜のうちに蒸発して、窓一面が結露します。密閉して足元に置いておけば、翌朝もウェットは凍らず、臭いも車内に広がりません。
外に置くなら、凍る前提で考えます。気温が0℃を下回る夜に外に掛けたウェットは、朝には板のように固まって、そのままでは着られません。リアゲート下や車体の風下に置いて、ポリタンクのお湯で解凍してから着るのが冬の定番です。解凍に使うお湯は2〜3リットル。次の章で扱うお湯の量に、この分を足しておいてください。
結露対策:換気は「1cm」、吸湿は「新聞紙」
人間は寝ている間に、呼吸と汗でコップ1杯以上の水分を出します。ウェットがなくても結露は起きるので、換気は必須です。対角の窓を1〜2cmだけ開けて、網戸を付けておけば、寒さはほとんど変わらず結露は劇的に減ります。全閉が一番寒くないように思えますが、朝の結露で寝袋が湿るほうが体感は冷えます。
窓ガラスの内側には、吸水性のある布か新聞紙を挟んでおくと拭き取りが楽です。サンシェードは断熱と目隠しに加えて、結露をガラスに直接つけない役割もあります。車種別のぴったりしたものは2万円前後、100均の銀マットを窓の形に切った自作なら2,000円で済みます。
臭い対策:密閉した後は「翌朝に必ず開ける」
臭いの原因は、湿った状態で密閉されたまま時間が経つことです。夜の間だけ密閉して、朝すぐ取り出して水ですすげば、臭いは定着しません。怖いのは、密閉したまま帰宅して翌日まで忘れること。これが一度あると、生地に臭いが染みつきます。帰宅後は、その日のうちに真水ですすいで陰干しするまでが車中泊です。
お湯とシャワー|ポリタンク・給湯器・銭湯の使い分け

冬の海上がりにお湯があるかないかは、翌日もう1本入れるかどうかを左右します。車中泊ではそこに「朝、凍ったウェットを解凍する」「朝のコーヒー」「歯磨き」が加わる。必要な量を先に決めて、それを「沸かす」手段と「保温する」手段に分けて選びましょう。
必要な量:1人1日で15〜20リットル
海上がりに頭からかぶって温まるのに5〜8リットル、ウェットの解凍に2〜3リットル、朝の炊事と洗面で2リットル。合計で1人1日あたり15リットル前後です。2人なら20リットルのポリタンクが2本。車に積む重さは40kgになるので、積む位置は後輪の上あたりが安定します。
保温:ポリタンクの保温カバーで一晩40℃台を保つ
家で60℃のお湯を入れて出発すると、保温カバーなしでは冬の車内で一晩に20℃以上下がります。厚手の保温カバーを付けて、寝袋やマットの隙間に置いておけば、翌朝でも40℃台を保てます。ポリタンクの選び方、お湯の温度管理、車内での置き方はポリタンクとお湯の秋冬完全ガイドで1本にまとめています。
沸かす:電気ケトルは電源が食う。車外のカセットコンロが現実的
車中泊でお湯を「作る」なら、選択肢は3つ。電気ケトル、カセットコンロ、カセットガス給湯器です。電気ケトルは手軽ですが、前の章で計算したとおり1リットルで約100Whを食います。500Wh級の電源でも、電気毛布と両立させるなら朝1回が限度と考えてください。
カセットコンロは燃料が安く、火力もあるので、車外で使う分には最も現実的です。ただし「車外で」が絶対条件。車内で火を使うと、一酸化炭素中毒と火災の両方のリスクがあり、実際に事故も起きています。風が強い日は風防を立てて、リアゲートの下で使うと、冬でも5分ほどで1リットル沸きます。
カセットガス式のポータブル給湯器は、ポリタンクから水を吸い上げてその場で温水シャワーにしてくれる道具です。1万5,000円前後と初期費用はかかりますが、20リットルのお湯を家から運ぶ必要がなくなる。連泊が多い人や、複数人で車中泊する人には、ポリタンクを増やすより結果的に楽になります。
銭湯・温泉を使う判断基準
車中泊の夜に温泉に入れるかどうかは、体力の回復にはっきり差が出ます。ポイントから車で20分以内に日帰り温泉があるなら、迷わず使ってください。1,000円前後で体の芯まで温まり、洗面も済み、寝袋に入るときの体温が違います。海の近くの温泉はサーフィン帰りの海近温泉10選でエリア別にまとめました。
安全面の必須知識|一酸化炭素・エコノミークラス症候群・場所のルール
冬の車中泊で怖いのは、寒さそのものより、寒さから逃げようとしてやってしまう行動です。ここは装備の話ではなく、やってはいけないことと、備えておくべき道具の話。3分で読めるので、必ず目を通してから出発してください。
一酸化炭素:車内で火を使わない、雪の日にエンジンをかけっぱなしにしない
一酸化炭素は無色無臭で、気づいたときには体が動きません。車内でのカセットコンロ、カセットガスヒーター、炭は、換気していても危険です。また、降雪時にエンジンをかけたまま寝ると、積もった雪でマフラーが塞がれて排気ガスが車内に入ります。毎年、この2パターンで亡くなる方がいます。
備えとして、一酸化炭素チェッカーを1台積んでおいてください。2,000〜3,000円で、危険な濃度になれば大音量で鳴ります。「使わないつもり」でも積んでおく。判断力が落ちた状態で自分を守れるのは、こういう道具だけです。
エコノミークラス症候群:座席のまま寝ない
運転席をリクライニングして寝ると、膝が曲がったまま長時間同じ姿勢になります。足の血流が滞って血栓ができ、朝立ち上がった瞬間に肺に飛ぶ。これがエコノミークラス症候群です。寒さで水分を控えると、さらにリスクが上がります。
予防は3つ。まず、足を伸ばして寝られるフラットな寝床を作ること。次に、寝る前にコップ1杯の水を飲むこと。そして朝起きたらすぐに動き出さず、車内で足首を回してから外に出ること。軽自動車で完全フラットが難しいなら、足元に荷物を詰めて段差を埋めるだけでも違います。
低体温症:濡れたまま寝ない、酒で温まらない
海上がりに体が冷え切ったまま寝袋に入ると、寝袋は体温を保つ道具なので、冷えたままの体は温まりません。お湯をかぶるか温泉に入るか、無理ならせめて温かいものを飲んで体温を上げてから寝る。お酒は一時的に温かく感じますが、血管が開いて体温は逃げていきます。寝酒で寒さ対策はできません。
場所のルール:駐車場での宿泊は「できる場所」だけで
車中泊は、どこでもしていいわけではありません。サーフポイントの駐車場には、夜間閉鎖のところ、宿泊禁止を明示しているところ、地元の方が黙認しているだけのところがあります。夜間の駐車が認められていない場所での宿泊は、周辺住民やローカルとのトラブルの元です。この記事は「泊まっていい場所で、安全に泊まる」ための装備の話であって、どこでも泊まることを勧めるものではありません。
車中泊が認められているRVパークや、車中泊可と明示している道の駅を起点にして、朝ポイントに移動するのが安全です。エリアごとの駐車事情や秋冬の遠征先の選び方は秋の国内サーフトリップガイドを参考にしてください。ゴミの持ち帰り、アイドリングをしない、深夜のドアの開閉を最小限にする。この3つは装備以前の話です。
【比較表】予算別の装備セット(3万/7万/15万円)
ここまでの内容を、予算別に3つのセットにまとめました。価格はいずれも目安で、セール時期を狙えばもう少し下がります。共通しているのは、3万円セットでも一酸化炭素チェッカーと寝床の断熱は削っていないこと。安全と睡眠は、どの予算でも最初に確保します。
| 項目 | 3万円セット(まず1泊) | 7万円セット(毎週通う) | 15万円セット(連泊・2人) |
|---|---|---|---|
| 寝袋 | 化繊・快適温度0℃前後(8,000円) | 化繊・快適温度-5℃(1万2,000円) | 化繊またはダウン・快適温度-10℃(2万5,000円) |
| マット | 銀マット+5cmインフレーター(6,000円) | 8cm車中泊マット(1万2,000円) | 10cm車中泊マット×2(2万4,000円) |
| 暖房 | 充電式湯たんぽ(3,000円) | 電気毛布シングル(5,000円) | 電気毛布×2+湯たんぽ(1万3,000円) |
| 電源 | モバイルバッテリー(手持ち) | ポータブル電源500Wh級(4万円) | ポータブル電源1000Wh級+走行充電(9万円) |
| 断熱・目隠し | 銀マット自作シェード(2,000円) | 自作シェード+窓用網戸(5,000円) | 車種別マルチシェード(2万円) |
| お湯 | 20Lポリタンク+保温カバー(4,000円) | ポリタンク×2+保温カバー(8,000円) | ポリタンク×2+カセットガス給湯器(2万3,000円) |
| 濡れ物 | 蓋付きバケツ(2,000円) | 防水バッグ+吸水タオル(5,000円) | 同左+リアゲートハンガー(1万円) |
| 安全 | 一酸化炭素チェッカー(2,500円) | 同左 | 同左 |
| 合計の目安 | 約2万8,000円 | 約7万円 | 約15万円 |
3万円セット:まず1泊してみたい人
ポータブル電源を買わずに、寝床の断熱と湯たんぽで乗り切る構成です。関東沿岸の11〜12月、明け方5℃前後までなら、これで問題なく眠れます。真冬に足りないと感じたら、電気毛布と電源を足すだけで7万円セットに育ちます。無駄になるものがありません。
7万円セット:毎週末、冬も通う人
500Wh級のポータブル電源を軸に、電気毛布で「寝袋の性能に頼りきらない」構成。寝袋の快適温度が-5℃なら、電気毛布を弱で回すだけで氷点下の夜も余裕が出ます。Wh計算で示したとおり、電気毛布の弱運転+スマホ充電+朝のケトル1回まで1泊でまかなえます。
15万円セット:連泊・2人・日本海側も視野に
1000Wh級の電源と走行充電で、2人分の電気毛布と連泊に対応。カセットガス給湯器で毎日のお湯を現地で作れるので、ポリタンクを家から運ぶ往復がなくなります。秋冬の装備全体をいつ買うかは秋冬サーフィン装備チェックリストで時期ごとに整理しています。車中泊装備も、11月前の購入が一番揃えやすいです。
よくある質問(FAQ)
Q1. 冬の車中泊で電気毛布を一晩使うには、何Whのポータブル電源が必要ですか?
シングルの電気毛布を「弱〜中」で8時間使う場合、消費量は200〜300Whです。変換ロスを見込んで0.85で割ると、実際に必要なのは約240〜350Wh。スマホ充電などを足しても、400Wh級で一晩は十分です。「強」のまま朝まで使う、電気ケトルも使う、2人で2枚使う。こうした条件が加わるなら、500〜1000Wh級を検討してください。寒さでバッテリーの出力が落ちるので、電源は床に直置きせずマットの上に置くのがコツです。
Q2. 濡れたウェットスーツは車内と車外、どちらに置くべきですか?
気温が0℃を下回る夜なら、車内に密閉して持ち込むのがおすすめです。蓋付きのバケツか防水バッグに入れて足元に置けば、朝も凍らず、結露や臭いも車内に広がりません。0℃を下回らないなら、リアゲート下など風の当たりにくい車外に掛けておくと、翌朝の車内の湿気を減らせます。どちらの場合も、海上がりにバケツで踏み絞りをして、持ち込む水分を減らしておくのが前提です。
Q3. 車内で寝るときにエンジンをかけっぱなしにしてはいけないのはなぜですか?
3つ理由があります。1つ目は一酸化炭素中毒の危険。降雪時はマフラーが雪で塞がれ、排気ガスが車内に逆流する事故が毎年起きています。2つ目は周囲への騒音と排気で、サーフポイントの駐車場では近隣トラブルの原因になります。3つ目は燃料の消費とエンジンへの負担です。冬の車中泊は「エンジンを切って、寝袋・マット・電気毛布で寝る」が大前提。暖房を使うのは、出発前と起きた後の短時間だけにしてください。
Q4. 寝袋のR値と快適温度、どちらを優先して選ぶべきですか?
R値はマットの断熱性能、快適温度は寝袋の性能で、それぞれ別の道具の指標です。優先順位はマットのR値が先。車の床は鉄板なので、下からの冷気を断たないと、どんな寝袋でも背中が冷えます。冬は合計R値4以上を確保したうえで、行き先の明け方の気温より5℃低い快適温度の寝袋を選んでください。たとえば湘南・千葉の1月なら、R値4以上のマットに快適温度-5℃の寝袋が目安です。
Q5. 冬の車中泊で結露を防ぐには、窓を閉め切ったほうがいいですか?
逆です。閉め切ると、呼吸と汗の水分が逃げ場を失い、朝には窓一面が結露します。対角の窓を1〜2cmずつ開けて、網戸を付けておけば、体感の寒さはほとんど変わらず結露は大幅に減ります。ガラスの内側にサンシェードや銀マットを当てておくと、結露がガラスに直接つかず、朝の拭き取りも楽です。濡れたウェットを車内に入れる場合は、必ず密閉してから持ち込んでください。
Q6. 冬のサーフィン車中泊で、最初に買うべき装備はどれですか?
一酸化炭素チェッカーと、床の断熱(銀マット+インフレーターマット)です。安全と睡眠の土台がこの2つで、合計1万円以内で揃います。次に快適温度0〜-5℃の化繊寝袋、その次に充電式湯たんぽか電気毛布。ポータブル電源は、湯たんぽで足りないと感じてから買っても遅くありません。この順番なら、後から買い足しても無駄になる装備が出ません。
まとめ:どれから揃えればいい?
冬のサーフィン車中泊は、夏とは別の競技です。寒さは我慢ではなく命の問題で、電源が要り、濡れたウェットの扱いに正解がある。この記事の要点を、揃える順番で整理します。
- 寝床はマットが先。冬は合計R値4以上、寝袋は行き先の明け方の気温より5℃低い快適温度で選ぶ
- ポータブル電源は「消費電力×時間÷0.85」で逆算。電気毛布を弱で8時間なら300〜400Wh級で足りる
- 濡れたウェットは海上がりに踏み絞りをして、凍る夜は密閉して車内へ。朝はお湯で解凍する
- お湯は1人1日15リットル。保温カバー付きポリタンクで運び、沸かすなら車外のカセットコンロ
- 車内で火を使わない、雪の日にエンジンをかけっぱなしにしない。一酸化炭素チェッカーを必ず積む
- 駐車場での宿泊は、認められている場所だけ。装備が揃っても、場所のルールは装備より優先する
- 予算3万円からでも安全と断熱は確保できる。電源は湯たんぽで足りなくなってからで遅くない
冬の海は空いていて、波は良くて、海から上がったときの空気が澄んでいます。その朝を車の中で迎えられるのは、前の夜にちゃんと眠れた人だけ。お湯まわりはポリタンクとお湯の秋冬ガイドへ。遠征全体の車内運用はサーフィン遠征の車内ガイドへ。夏の装備は夏の車中泊必需品へ。この3本と合わせて読むと、1年中の車中泊がつながります。
まずは近場で1泊、装備を試してみてください。足りなかったものだけを買い足していけば、来シーズンには自分だけの冬仕様が出来上がっています。凍った朝の海で、お会いしましょう。


















