
暑い夏の海は最高だ。透き通った水、心地よい潮風、そして気持ちのいい波——。でも実は、夏のサーフィンには「熱中症」という見えないリスクが潜んでいる。「海の中にいるから涼しいでしょ」と思っていないだろうか。実はそれが危険な思い込みだ。海水に浸かっていても体は汗をかき続ける。炎天下のパドリング、日差しの照り返し、ウェットスーツの保温性——これらが重なって体温はじわじわ上昇する。今回は、サーファーが知っておくべき熱中症対策を、入水前から帰宅後まで徹底解説する。
なぜサーファーは熱中症になりやすいのか
海の中にいると汗をかいていることに気づかない。これがサーファーの熱中症を引き起こす最大の原因だ。
陸上でのスポーツなら汗が目で見えるから補給のタイミングがわかりやすい。でも海の中では、汗をかいても海水に流されて自分でも気づかない。のどが渇く感覚もマスクされやすく、「全然大丈夫」と思いながら体内の水分はどんどん失われていく。
1時間のパドリングで失う水分は500〜700ml程度と言われている。真夏なら1リットルを超えることも珍しくない。にもかかわらず、補給を忘れて2〜3時間海にいると、脱水状態になるのは当然だ。
さらに厄介なのが海特有の環境だ。水面からの紫外線の照り返しは直射日光よりも強く、ウェットスーツは体温の逃げ場を少なくする。そして炎天下でのパドリングとテイクオフの繰り返しは、体力を思った以上に消耗させる。
「なんかだるいな」「ちょっと頭が重い」——その感覚を「波酔いかな」「疲れたかな」で片付けていないだろうか。熱中症の初期症状は、サーフィンの疲れと区別がつきにくい。だから見逃しやすく、対処が遅れてしまいやすい。
セッション前の水分補給ルーティン
熱中症対策は海に入る前から始まっている。「入水してから飲もう」では遅い。のどが渇いた感覚が出たときには、すでに体内の水分は1〜2%不足しているからだ。この段階ではすでにパフォーマンスも下がり始めている。
入水2時間前:水かスポーツドリンクを500ml程度、ゆっくり飲む。一気飲みではなく、少しずつ体に吸収させるイメージで。
入水30分前:さらに200〜300ml追加。このとき塩分もセットで補給しよう。汗で失われるナトリウムを補うために、スポーツドリンクや塩タブレットが効果的だ。
ビーチには必ずクーラーボックスを持参しよう。経口補水液(OS-1やポカリスウェットなど)を入れておくと、セッション中の休憩ごとにすぐ補給できる。「水を取りに行くのが面倒」という理由で補給をサボるのが一番よくない。手が届くところに置いておくだけで習慣が変わる。
もうひとつ見落としがちなのが「前日の飲酒」だ。アルコールには利尿作用があり、翌朝の体はすでに軽い脱水状態になっている。二日酔いのままサーフィンするのはもちろんNGだが、「一杯だけだから大丈夫」という油断も禁物だ。
セッション中に気をつけたい危険サイン
波乗りに集中しているとき、体の変化に気づくのはとても難しい。だからこそ、「これが出たら休む」というサインを事前に頭に入れておくことが重要だ。
1. こめかみがズキズキする・頭が重い
頭痛は熱中症の代表的な初期症状だ。「波酔いかな?」と思いがちだが、陸に上がっても続くようなら熱中症を疑ってほしい。波酔いなら横になれば比較的早く治まるが、熱中症による頭痛は安静にしても改善しにくい傾向がある。
2. 体がだるい・パドリングが急につらくなった
「今日は調子が悪いな」で終わらせがちだが、これも危険サインだ。特に「いつもは余裕なのに腕が上がらない」「波が来ても動けない」という感覚は要注意。体が限界を超えているサインかもしれない。
3. 吐き気・気分の悪さ
陸に上がった後に急に吐き気が来ることも多い。海にいる間は気分よく乗れていたのに、上がった瞬間に体調が急変するというパターンが熱中症には多い。セッション後も油断せず観察しよう。
仲間と入っているときは、お互いの顔色や動きを定期的にチェックしよう。「最近上がってこないな」「あいつなんか変だな」と感じたら、迷わず声をかけること。一人でのサーフィンは特に慎重に自己管理を徹底してほしい。
休憩のタイミングとクールダウン術
どれだけ波がよくても、60〜90分に一度は必ず陸に上がること。これを守るだけで熱中症のリスクは大幅に下がる。
「あと1本乗ったら」が命取りになることがある。特に夏の炎天下で2〜3時間ノンストップでいると、体温の上昇はかなりのものだ。楽しいのはよくわかる。でも、熱中症で倒れたら次のセッションもできなくなる。長く海を楽しむためにこそ、休憩は惜しまないでほしい。
陸に上がったらまずウェットスーツやラッシュガードを脱いで、体から熱を逃がそう。次に日陰か風通しのいい場所に移動して5〜10分ゆっくり休む。水分・塩分補給も忘れずに。さらに効果的なのが、濡れタオルを首の後ろ・脇の下・足の付け根に当てることだ。太い血管が通っているこれらの部分を冷やすと、体温を効率よく下げられる。
ひとつ注意してほしいのが「パラソルやテントの中」だ。日差しは遮れても、風が弱いと蒸し暑い空間になってしまう。できれば車のエアコンや海の家の涼しい場所で、しっかり体温を下げよう。
熱中症になったときの緊急対処法
症状が出たら、迷わず行動することが大切だ。「もう少ししたら治るかも」と様子を見ていると、あっという間に重症化することがある。
Step 1: すぐに海から上がる
どんな波でも体調を優先すること。海の中で意識を失うと取り返しのつかない事態になる。
Step 2: 涼しい場所に移動する
日陰に移動し、可能であればエアコンの効いた場所(車内・海の家)へ。体温を下げることが最優先だ。
Step 3: 水分・塩分を少量ずつ補給する
一気飲みは厳禁。吐き気が増すことがある。少量を口に含む程度からスタートし、落ち着いてきたら少しずつ増やそう。スポーツドリンクか経口補水液が最適だ。
Step 4: 体を冷やす
濡れタオルを首・脇の下・足の付け根に当てる。氷があればタオルに包んで同じ場所に当てると効果的だ。
以下の症状があったら、すぐに救急車を呼ぼう。
- 意識がもうろうとしている、呼びかけに反応しない
- まっすぐ歩けない、体がふらついている
- 自力で水分が取れない
- けいれんが起きている
一人で様子を見ず、仲間に声をかけてすぐに対応しよう。
まとめ
夏のサーフィンは最高だ。でも熱中症は、楽しいセッションを台無しにするだけじゃなく、命に関わる危険もある。「海にいるから大丈夫」という油断を捨て、入水前の水分補給・セッション中の体調チェック・こまめな休憩、この3つを習慣にしてほしい。
体を大切にしながら、今シーズンも最高の波に乗り続けよう。
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