沖に出ようとパドリングしていたら、目の前に白い壁。ボードを沈めようと必死に体重をかけても、まったく沈まない。次の瞬間、スープに押し戻されて振り出しに戻る……。ロングボードやミッドレングスに乗っている人なら、一度は味わった光景ですよね。
周りのショートボーダーはスイスイ潜って沖に出ていく。自分だけ何度も岸に戻される。あの疲労感と気まずさ、本当にきついです。
でも安心してください。浮力の大きいボードには、ドルフィンスルーとは別の「正解」があります。それがローリングスルーとプッシングスルーです。この2つを波のサイズで使い分けられるようになると、沖に出るまでの体力の消耗が驚くほど減ります。
この記事では、ローリングスルーのやり方を5ステップで分解します。さらに「どのサイズでどの技を使うか」の早見表、うまくいかないときの原因別チェックリスト、そして陸と浅瀬でできる練習ドリルまで解説します。読み終わるころには、次の海でやることが明確になっているはずです。
なぜロングボードはドルフィンスルーできないのか

まず、うまくいかない理由をはっきりさせておきましょう。原因が分かると、対処法が腹落ちします。
浮力は「体重で沈められる限界」を簡単に超える
ドルフィンスルーは、ボードを水中に沈めて波の下をくぐる技です。つまりボードの浮力を、自分の体重と腕力でねじ伏せる必要があります。
ショートボードの浮力は、だいたい25〜32リットルほど。これなら体重をかければ沈みます。ところがファンボードで40リットル前後、ロングボードになると60〜70リットルを超えてきます。
浮力60リットルのボードを完全に沈めるには、単純計算で60kg分の力が必要です。これを腕2本と膝1つでやるのは、現実的ではありません。体重60kgの人が全体重を乗せてようやく水面ギリギリ、という計算になります。
実際、ミッドレングス乗りの体感でも「45リットルを超えるとドルフィンがきつくなる」という声が多いです。長さより先に、浮力が壁になります。
ノーズの形も効いてくる
もうひとつの理由がノーズ形状です。ドルフィンスルーは「ノーズを沈める→テールを踏み込む」という順番で成立します。
ショートボードのノーズは尖っていて、先端の体積が小さい。だから沈めやすいんです。一方、ロングボードやミッドレングスのノーズは丸い。この丸みが先端の浮力を大きくして、押し込んでも跳ね返してきます。
ノーズが沈まなければ、その後のテール沈めにもつながりません。技の起点でつまずくわけです。ここを腕力で解決しようとすると、沖に出る前に腕が終わります。
押し戻される正体は「スープの斜面」
ではなぜ、あんなに強く岸へ押し戻されるのか。スープをよく観察すると、白い泡が波の斜面を滑り降りてくるのが分かります。
私たちが見ている白い壁の内側には、まだ崩れていない波の斜面が隠れています。スープはその斜面に乗って、加速しながら岸へ向かってくるんです。
そこに浮いたままのボードをぶつけると、デッキ面がまるごと受け皿になります。ボードは大きな板ですから、受ける面積も大きい。結果、体ごと持っていかれます。
逆に言えば、スープに当てる面をコントロールできれば、押し戻される量は劇的に減らせるということです。これがローリングスルーとプッシングスルーの共通した考え方になります。
【早見表】波のサイズ別・4つの越え方の使い分け
ここが多くの人がつまずくポイントです。ローリングスルーを覚えたからといって、毎回ローリングするのは間違いです。
ローリングスルーは一度ひっくり返って戻る動作なので、時間もかかるし体力も食います。うねりの周期が短い日に連発すると、いわゆる「ローリング祭り」になって永久に沖に出られません。
だから、波のサイズと状況に応じた使い分けが必要です。まずは全体像を整理しておきましょう。
| テクニック | 適したサイズ | 適したボード | 消耗度 | 難易度 |
|---|---|---|---|---|
| 越えずにかわす(コース取り) | 全サイズ | すべて | ★☆☆ | ★★☆ |
| プッシングスルー | 膝〜腰のスープ | ロング・ミッド・ソフト | ★☆☆ | ★☆☆ |
| シッティングスルー | 崩れる前のうねり | ロング中心 | ★☆☆ | ★★☆ |
| ローリングスルー | 腰〜頭のスープ | ロング・ミッド・ソフト | ★★★ | ★★★ |
| ドルフィンスルー | 全サイズ | ショート・7'0以下 | ★★☆ | ★★★ |
迷ったら「プッシング→ローリング」の順で考える
判断の手順はシンプルです。まず、そもそも越えなくて済むコースがないか探します。次に、プッシングスルーで足りるかを見ます。足りないと判断したときだけ、ローリングスルーに切り替えます。
目安として、膝から腰くらいのスープならプッシングスルーで十分こなせます。腰を超えて胸や肩に届くスープが来たら、ローリングスルーの出番です。
この線引きは体格やボードの浮力によって前後します。何度か海で試して、自分なりの切り替えラインを見つけるのが一番早いです。
シッティングスルーは「崩れる前」限定
シッティングスルーは、ボードにまたがったまま浮力でうねりを越える方法です。ボードがシーソーのように傾いて、波を乗り越えてくれます。
これはまだ崩れていないうねりに対してだけ有効です。すでにブレイクしたスープに使うと、まず押し戻されます。最悪、座ったまま巻かれます。
ただ、うねりを越えながら次のセットを目視で確認できるという利点があります。沖の状況を見ながら進めるので、位置取りの精度が上がるんです。使いどころを間違えなければ、かなり便利な技です。
プッシングスルー:小波の日はこれで9割いける

夏の日本の海は、膝から腰くらいのサイズが大半です。この日にローリングスルーを連発するのは、明らかにオーバーキルです。
プッシングスルーは、ボードを水面に押し下げて自分の体を持ち上げる技です。ボードと体の間にすき間を作り、そこにスープを通してしまう。これだけです。
やり方は3ステップ
ステップ1:パドルでスピードをつける。スープに向かってまっすぐ加速します。止まった状態で受けると、そのぶん余計に戻されます。
ステップ2:両腕を伸ばして上体を起こす。腕立て伏せの上のポジションをイメージしてください。同時に片足の甲でテールを軽く踏み、体全体を浮かせます。
ステップ3:すき間にスープを通す。ボードと胸の間に水が抜けていく感覚があれば成功です。通過したらすぐに寝てパドルを再開します。
失敗するのは「起こすのが遅い」ケース
プッシングスルーでよくある失敗が、タイミングの遅れです。スープが胸に当たってから起こしても間に合いません。
目安として、スープがボードのノーズに触れる直前には上体が起き上がっている状態を作ります。1テンポ早いくらいでちょうどいいです。
もうひとつ多いのが、腕が曲がっているパターン。腕が曲がると体が持ち上がらず、結局デッキ面でスープを受けてしまいます。肘はしっかり伸ばしきってください。
ローリングスルーより優れている点
プッシングスルーには、ローリングスルーにない大きな利点があります。それは視界が切れないことです。
上体を起こしたまま越えるので、波の向こう側がずっと見えています。次のセットが来ているかどうか、その場で判断できるんです。
ローリングスルーだと、水中にいる数秒間は完全に情報が途切れます。浮上したら目の前に次の波、というのはよくある話です。
もうひとつは復帰の速さです。プッシングスルーなら、越えた瞬間からパドルを再開できます。ボードを裏返して戻す工程がないぶん、ロスが2〜3秒少ないんです。
この2〜3秒は、周期の短い日には決定的な差になります。だからこそ、まずはプッシングスルーで越えられないかを毎回考えてほしいんです。
なお、詳しいパドリングの姿勢や沖に出る全体の流れはサーフィンのゲットアウト完全攻略|沖に出るコツと突破術で解説しています。あわせて読むと理解が早まります。
ローリングスルーのやり方5ステップ

ここからが本題です。ローリングスルーは、ボードごと横にひっくり返って波の下にぶら下がる技です。海外では「タートルロール」と呼ばれています。亀がひっくり返った姿に見えるから、だそうです。
動作を5つに分解して、それぞれで意識することを整理していきます。
ステップ1:スープを見てから加速する
波が近づいてきたら、まずパドルで加速します。回転した瞬間に前進のエネルギーはほぼ止まりますが、それでも助走の有無で戻される距離は変わります。
このとき同時にやってほしいのが、スープの状態を見ることです。厚くダラダラ崩れているのか、それとも上から巻き込むように掘れているのか。この違いで、あとのタイミングが変わります。
加速の距離は、ボード1〜2本分あれば十分です。それ以上手前から全力で漕ぐと、肝心の回転時に息が上がります。
ステップ2:レールを掴む位置を決める
パドルをやめて、両手で左右のレールを掴みます。ここが最大のポイントです。
掴む位置は、テイクオフで手をつく場所より、こぶし1〜2個ぶんノーズ寄りを基準にしてください。理由は物理的です。ノーズ寄りを持つと、波がボードをめくり上げようとするテコの支点が前に移ります。
支点が前にあれば、波の力を受ける面積が小さくなります。逆にテール寄りを掴むと、ノーズ側の広い面積がまるごとめくり上げの力を受けてしまいます。
ただし、ノーズ寄りすぎるのも危険です。ロングボードのノーズは細くなっているので、強い力で引かれると手からすっぽ抜けます。掴んだときに一番力が入る場所、というのが実用的な答えです。
ソフトボードの場合はレールが太くて掴みにくいことがあります。その場合は指を深くかけるより、手のひら全体で挟むようにすると安定します。
ステップ3:息を吸ってから横に回転する
レールを掴んだら、大きく息を吸います。この一呼吸を忘れる人が本当に多いです。水中に入ってから慌てるのは、たいていここが抜けているからです。
そして体重を片方のレールにかけ、ボードごと横にくるんと回転します。前転や後転ではなく、横回転です。ボードのボトム面が空を向く形になります。
タイミングは、スープがボードに当たると同時に回転し終わっているのが理想です。当たってから回すのでは間に合いません。
ただし、上からリップが直に落ちてくるような掘れた波では話が変わります。この波質では、回転をわずかに遅らせて、ボトム面が斜めの状態でリップを受けるようにします。真上から真っ平らな面で受けると、ボードがへこんだり、最悪折れることもあります。
とはいえ、掘れた波にロングボードで突っ込む状況は初心者のうちはまずありません。基本は「早めに回す」で覚えておいて大丈夫です。
ステップ4:腕をたたんでボードを引き寄せる

水中に入ったら、腕を伸ばしたままぶら下がってはいけません。ここも差が出るポイントです。
腕を伸ばすと、ボードを保持しているのは握力だけになります。握力だけで波の力に耐えるのは無理があります。
正解は、肘をたたんでボードを自分の胸に引き寄せることです。こうすると背中と胸の大きな筋肉が使えるようになり、保持力が跳ね上がります。
もうひとつ副次的な効果があります。ボードと体が一体になって小さくまとまるので、波が押す面積そのものが減るんです。丸まった姿勢は、それだけで有利になります。
体の位置は、ボードの真下ではなく少しテール寄りにぶら下がるイメージです。真下だと、めくり上げられたときに顔面にボードが来ることがあります。
ステップ5:テール側から返して即パドル再開
スープが通過したら、すぐにボードを元に戻します。ここで一瞬でも迷うと、次の波が来ます。
戻し方にはコツがあります。片手をテール側にずらし、その手でボードを持ち上げるようにして返します。テール側は幅が狭いので、回転させる半径が小さくて済むんです。
両手で真ん中を返そうとすると、ボードの幅ぶんだけ大きく持ち上げる必要があり、時間がかかります。この数秒が命取りになります。
返したら即座に乗り込んでパドル開始です。目が開けられなくても、鼻に水が入って気持ち悪くても、まずは漕ぐ。髪をかき上げたり顔を拭いたりするヒマはありません。
この「戻してすぐ漕ぐ」を徹底できるかどうかで、沖に出られる日と出られない日が分かれます。技そのものより、ここの意識のほうが効きます。
よくある失敗パターンと直し方
手順どおりにやっているのにうまくいかない。そんなときは、以下の4パターンのどれかに当てはまることが多いです。症状別に見ていきましょう。
症状1:ボードが手から離れて飛ばされる
いちばん多い失敗です。原因の8割は、水中で腕が伸びていることです。
ステップ4で書いたとおり、肘をたたんで引き寄せてください。それでも離れる場合は、掴む位置がテール寄りすぎる可能性があります。もう少しノーズ側にずらしてみましょう。
また、ボードが水平になっていないケースもあります。ひっくり返ったとき、ボードが斜めに立っているとデッキ面がスープを受けてめくり上げられます。水平を意識すると、ノーズロッカー(ノーズの反り)が自然と水中方向を向いて、力を逃がしてくれます。
症状2:鼻や耳に水が入って毎回つらい
ローリングスルーは頭が下を向くので、鼻に水が入りやすい体勢です。対策はシンプルで、水中では鼻から少しずつ息を吐き続けること。
鼻から空気が出ていれば、水は入ってきません。ステップ3で息を吸っておくのは、この「吐く分」を確保するためでもあります。
耳が弱い人は、サーフィン用の耳栓を検討してもいいでしょう。それでも入ってしまったときの対処は耳に水が入った時の抜き方6選|サーファー向け対処法にまとめています。
症状3:越えられるけど毎回大きく戻される
ここで認識を変えておきたいのですが、ローリングスルーはゼロで抑える技ではありません。多少戻されるのは仕様です。
ドルフィンスルーのように波の力を完全にかわせるわけではないんです。波が通過したあと、体勢が安定していてすぐパドルを再開できていれば、それは成功と考えていいです。
それでも戻される量を減らしたいなら、ボード先端を入れる位置を工夫します。スープと、まだ崩れていない水面との境目あたりにノーズを差し込む感じです。ここを狙うと、スープがボトム面の上を滑るように通過してくれます。
症状4:ローリングの連発で体力が尽きる
これは技術の問題ではなく、判断の問題です。ローリング祭りになっているということは、そもそもコース取りかタイミングが間違っています。
いったん立てる深さまで戻って、海を2〜3分観察しましょう。セットとセットの間には必ず静かな時間があります。そこを狙って一気に出る。これだけでローリングの回数は半分以下になります。
体力を消耗しきってから沖に出ても、いい波には乗れません。休む勇気も技術のうちです。
そもそも越えない:ピークを外すコース取り
上手いロングボーダーを観察していると、あることに気づきます。びっくりするほどローリングスルーをしていないんです。
技が上手いから、ではありません。そもそも波を越えなくていいコースを選んでいるからです。ここが最大の差別化ポイントかもしれません。
入る前に3分、海を見る
海に入る前の観察時間を、必ず取ってください。3分でいいです。見るべきものは3つあります。
ひとつめは、波が割れていない場所。ピークの横には、波が崩れずに深いままの部分が必ずあります。ここを通れば、そもそもスープを受けません。
ふたつめは、セットの周期。5秒おきに波が来る日と、15秒おきの日ではまるで難易度が違います。周期が長い日は、その静かな時間を狙って一気に出ます。
みっつめは、他のサーファーの動き。すでに沖に出ている人がどのルートを通ったか。地元の人の動線には、その日の正解が詰まっています。
カレントは使えるが、使い方を間違えない
沖に向かう潮の流れ(カレント)に乗れば、漕がずに沖まで運んでもらえます。流れるプールに乗るイメージです。
ただし、これには前提知識が要ります。カレントに乗り続けると、想定以上に沖まで流されます。抜けるときは岸に向かって漕ぐのではなく、横方向にパドルして流れの外に出るのが鉄則です。
流れに逆らって岸へ漕ぐのは、体力を捨てる行為です。もし戻れないと感じたら、無理せず手を振って周囲に知らせてください。判断の詳細はサーフィンで流された時の対処法|セルフレスキューにまとめています。
引き波のタイミングで漕ぐ
もうひとつ、意外と知られていないのが引き波の活用です。波と波の間には、水が沖に戻っていく瞬間があります。
この瞬間に全力で漕ぐと、水の流れに乗って驚くほど進みます。逆に押し波のタイミングで全力を出しても、その場で足踏みしているようなものです。
「押されているときは軽く、引かれているときは全力で」。このリズムを覚えるだけで、沖に出るまでの時間が短くなります。
陸と浅瀬でできる練習ドリル
ローリングスルーは、いきなり大きな波でやると怖いです。事前に安全な場所で動きを体に入れておきましょう。
ドリル1:波のない浅瀬で回転だけやる
腰くらいの深さの、波が来ていない場所で試します。ボードに腹ばいになり、レールを掴んで横に回転する。ただそれだけを10回繰り返します。
目的は、回転の感覚と手の位置を体に覚えさせることです。波がない状態なら、掴む位置を変えながら「一番力が入る場所」をじっくり探せます。
あわせて、テール側から片手で返す動作も練習しておきます。この戻し方が身についていると、実戦での復帰が一気に速くなります。
ドリル2:小さいスープで実戦練習
次は、膝くらいの小さいスープで実際にやってみます。本来ならプッシングスルーで足りるサイズですが、あえてローリングします。
小さい波なら、失敗しても流される距離はわずかです。安心して回転のタイミングを試せます。「当たる直前に回し終わる」感覚を、ここで掴んでおきましょう。
夏の日本の海は、この練習にうってつけの条件が揃っています。水温が高く、サイズも小さい。今のうちに仕込んでおくと、秋の台風シーズンで差が出ます。
ドリル3:陸で呼吸のリズムを作る
意外と効くのが呼吸の練習です。陸で「吸う→止める→鼻から少し吐く」を5秒サイクルで繰り返します。
ローリングスルーで水中にいる時間は、実際には2〜4秒程度です。ところが焦っていると、この数秒がとても長く感じます。呼吸のリズムが作れていると、この体感時間が短くなります。
水中でパニックになりやすい人は、サーフィンのホールドダウン対処法|脱力・呼吸でパニック回避も参考になります。呼吸と脱力はセットで効いてきます。
ドリル4:家でレールの握力を作る
ボードを飛ばされる人の多くは、単純に保持する力が足りていません。これは家でも鍛えられます。
おすすめは、タオルを両手で握って胸に引き寄せる動きです。肘をたたんで引き込む感覚が、そのままローリングスルーの姿勢につながります。
10秒キープを5セット。これを週2〜3回やるだけで、水中での安心感がまるで変わります。握力そのものより、引き込む筋肉を意識するのがポイントです。
ボードを実際に持って、レールを掴んだまま持ち上げてみるのも有効です。自分のボードのどこが一番持ちやすいか、陸のうちに確認しておきましょう。
安全とマナーで気をつけたいこと
ローリングスルーは体を水中に入れる技なので、周囲が見えなくなる瞬間があります。ここで注意点をいくつか。
後ろに人がいないか回る前に確認する
ひっくり返ると、ボードは自分より岸側に流れます。真後ろに人がいると、そのままぶつかる可能性があります。
回転する前に、一瞬だけ後方を見る癖をつけてください。ロングボードは重いので、当たったときのダメージも大きいです。
ボードを捨てるのは最終手段
ローリングが間に合わないとき、ボードを手放して自分だけ潜る方法もあります。ただ、これはデメリットが多いです。
リーシュコードに強い衝撃がかかって切れる危険があります。ボードが波に叩きつけられて折れることもあります。そして何より、周囲に人がいる状況では完全にマナー違反です。
やむを得ず手放す場合は、周りに誰もいないことを確認したうえで、ボードを波と平行にして離します。この向きだと折れにくいと言われています。
リーシュコードは消耗品と考える
ローリングスルーを繰り返すと、リーシュには何度も強い力がかかります。付け根のスイベル部分は、思っている以上に劣化します。
目安として1年に1回は交換しておくと安心です。海に入る前に、付け根を軽く引っ張って確認する習慣もつけておきましょう。
ロングボード用のリーシュは、ボード長と同じかやや長めを選びます。9フィートのボードなら9フィート前後が基準です。短すぎると、ローリング時にボードが引き戻されて動きを邪魔します。
混雑時はローリングそのものを避ける
夏の海は人が多いです。特にお盆前後は、ピークに20人以上ということも珍しくありません。
この状況でローリングスルーを連発するのは、正直リスクが高いです。水中にいる間、周りが完全に見えなくなるからです。
混雑している日は、遠回りでも人の少ないコースを選ぶほうが安全です。時間はかかりますが、事故のリスクを考えれば十分に割に合います。
そして自分が波に乗っているとき、目の前でローリングしている人を見かけたら、必ず避けてあげてください。あの体勢からは、こちらが見えていません。
よくある質問
Q1. ローリングスルーとタートルロールは違うものですか?
同じ技の別名です。日本では「ローリングスルー」、英語圏では「turtle roll(タートルロール)」と呼ばれています。ボードごとひっくり返った姿が、甲羅を上にした亀に見えることが名前の由来だとされています。海外のサーフスクールや動画を見るときは、タートルロールで検索したほうが情報が見つかります。エスキモーロールと呼ばれることもありますが、これはカヤックの技と混同されやすいので、タートルロールで覚えておくのがおすすめです。
Q2. ソフトボードでもローリングスルーはできますか?
できますし、むしろソフトボードこそローリングスルーが必要です。ソフトボードは浮力が大きく設計されているため、ドルフィンスルーはほぼ不可能だからです。ただし2点だけ注意があります。ひとつはレールが太くて厚いため、掴みにくいこと。指をかけるより手のひら全体で挟むと安定します。もうひとつは、素材が軽いぶん波にめくり上げられやすいこと。腕をしっかりたたんで、体に引き寄せる意識をより強く持ってください。
Q3. 水中ではどのくらい息を止めていればいいですか?
実測すると、腰から胸サイズのスープなら2〜4秒程度です。頭サイズでも5秒を超えることはほとんどありません。体感ではもっと長く感じますが、実際はこの程度です。大切なのは、回転する直前に必ず息を吸っておくこと。そして水中では鼻から少しずつ息を吐き続けることです。吐き続けていれば鼻に水が入りませんし、苦しさもやわらぎます。息を止めたまま我慢すると、かえって早く苦しくなります。
Q4. 何センチくらいのボードからローリングスルーが必要になりますか?
長さより浮力で判断するのが正確です。目安として浮力40リットルを超えたあたりから、ドルフィンスルーが難しくなります。長さでいえば7フィート(約213センチ)が分かれ目です。7フィート以下ならドルフィンスルーも選択肢に入りますが、ノーズが丸いモデルは同じ長さでも沈みません。体重も影響します。体重が軽い人ほど早い段階で浮力に負けるので、6フィート台でもローリングスルーを覚えておいて損はありません。
Q5. ローリングスルーしても毎回押し戻されます。失敗ですか?
失敗ではありません。ローリングスルーは、押し戻される量を最小限にする技であって、ゼロにする技ではないからです。ドルフィンスルーのように波の力を完全にかわすことはできません。判断基準は「波が通過したあと、すぐパドルを再開できる体勢かどうか」です。多少戻されていても、ボードを保持できていて姿勢が安定していれば成功と考えていいでしょう。戻される量が気になるなら、スープと未崩壊の水面の境目にノーズを差し込む位置取りを試してみてください。
Q6. プッシングスルーとローリングスルー、どちらを先に覚えるべきですか?
プッシングスルーが先です。理由は3つあります。動作が単純で習得が早いこと、体力の消耗が少ないこと、そして日本の海では使用頻度が圧倒的に高いことです。膝から腰のサイズが大半を占める夏場なら、プッシングスルーだけで沖に出られる日がほとんどでしょう。プッシングスルーが安定してきたら、ローリングスルーに進んでください。順番を守ったほうが、結果的に上達は早くなります。
まとめ
ロングボードで沖に出られない悩みは、技術より「選択」で解決することが多いです。最後に要点を整理します。
- 浮力40リットル超・7フィート超のボードは、ドルフィンスルーを前提にしない
- 膝〜腰のスープはプッシングスルー、腰〜頭のスープはローリングスルーで使い分ける
- ローリングスルーはレールを少しノーズ寄りで掴み、息を吸ってから横に回転する
- 水中では腕をたたんでボードを引き寄せ、体と一体になって小さくまとまる
- 戻すときはテール側から片手で返し、顔を拭く前にパドルを再開する
- そもそも波を越えないコース取りとタイミング選びが、いちばん効く
あわせて読みたい記事も置いておきます。ショートボードに乗り換えたときはドルフィンスルーのやり方|沖へ出る波の越え方とコツへ。ロングボードそのものの基本を押さえたい人はロングボード入門|乗り方の基本とショートとの違いが入口になります。
沖に出られない日って、正直へこみますよね。でも、越え方さえ変えれば景色は変わります。次の海では、入る前の3分だけ波を見てみてください。そこから全部つながっていきます。



















