沖に出ようと必死にパドリングしても、波に何度も押し戻されて、気づけば腕はパンパン。スタート地点から一歩も進めず、心が折れそうになった経験はありませんか。サーフィンを始めて最初にぶつかる大きな壁、それが「波越え」です。
この壁を突破する鍵が、ドルフィンスルー。ボードと体を一緒に沈めて、押し寄せる波の下をくぐり抜けるテクニックです。これができるかどうかで、沖に出られる体力も、海にいられる時間も、まるで変わってきます。
この記事では、湘南・千葉の海で波と向き合ってきたWaves編集部が、ショートボードのドルフィンスルーの手順を5ステップに分解。さらにロングボード派向けの波越え、タイミングの取り方、できない原因の直し方まで、初心者がつまずくポイントを丸ごと解説します。読み終えるころには、波の下をくぐる感覚がイメージできるはずです。
この記事でわかること(目次)
- ドルフィンスルーとは?なぜ沖に出られないのか
- 【手順】ショートボードのドルフィンスルー5ステップ
- ロング・ファンボードの波越え(プッシュ/ローリングスルー)
- 成功率を上げる「タイミング」の取り方
- ドルフィンスルーができない3つの原因と直し方
- 体力を温存するコツと上達のための練習法
- よくある質問(FAQ)/まとめ
ドルフィンスルーとは?なぜ沖に出られないのか

ドルフィンスルーとは、ボードと自分の体を海中に沈め、崩れてくる波の下をくぐり抜ける技術です。イルカが波を潜り抜ける姿に似ていることから、この名前がつきました。海外ではダックダイブ(duck dive)とも呼ばれます。
波は、表面のパワーがいちばん強く、水面下では力が一気に弱まります。だから波の真上で受け止めるのではなく、下にもぐって「やり過ごす」ほうが、はるかにラクなんです。
これができないと、何が起こる?
ドルフィンスルーを知らないと、崩れた波を体とボードでまともに受け止めてしまいます。1回ごとに数メートル押し戻され、体力もどんどん削られます。結果、沖にたどり着く前にバテてしまうわけです。
逆に言えば、この技を覚えるだけで、消耗を最小限に抑えて沖まで出られます。パドリングと並ぶ、初心者必修のスキルといえます。沖に出ること自体の流れは、ゲットアウトの記事もあわせて読むと理解が深まります。
「ドルフィンスルー」と「ダックダイブ」は同じもの
呼び方が違うだけで、指す技術は同じです。日本では波の下を潜り抜ける姿から『ドルフィンスルー』、海外ではアヒルが水に潜る様子から『ダックダイブ(duck dive)』と呼ばれています。動画教材や海外の解説を探すときは、ダックダイブで検索すると情報が一気に増えますよ。
ちなみに、しっかり潜れるようになると、波待ちの位置取りも自由になります。混雑した場所を避けて、自分の乗りたい波が来るスポットへ移動しやすくなるのも、地味に大きなメリットです。
【手順】ショートボードのドルフィンスルー5ステップ

ショートボードは浮力が小さく沈めやすいので、ドルフィンスルーに向いています。次の5ステップに分けて、ひとつずつ体に覚えさせましょう。
STEP1:波に向かってしっかりパドリングする
まずは助走です。波に向かって、ある程度のスピードをつけてパドリングします。勢いがあると波の抵抗に負けにくく、潜った後に前へ抜けやすくなります。止まった状態から潜るのは、いちばん難しいパターンです。
STEP2:両手でレールを押さえ、ノーズを沈める
波が約1〜1.5メートル手前に近づいたら、テイクオフより少しノーズ寄りに両手を置きます。肘を伸ばし、腕ではなく体重をかけてノーズを真下へ沈めます。手首の力で押そうとすると、まず沈みません。
STEP3:膝または足でテールを踏み込む
ノーズが沈んだら、膝か足の甲でテールを踏み込み、ボード全体を水平に近い状態で深く沈めます。ここが最大のポイント。テールを踏めていないと、波の力でボードが浮き上がり、弾き返されてしまいます。
STEP4:波の力をやり過ごし、息を吐く
もぐったら、頭を下げて波の通過を待ちます。このとき息を吸い込むより、軽く吐くほうが体が沈みやすく安定します。一瞬の辛抱です。波の渦が頭の上を通り過ぎる感覚を待ちましょう。
STEP5:ノーズを引き上げ、前へ抜ける
波が通り過ぎたら、前の手でレールを引き、足を蹴り出してノーズを斜め上へ。ボードの浮力を使って水面へ浮上し、そのまま次のパドリングにつなげます。浮いてすぐ漕ぎ出せると、流れが途切れません。
ロング・ファンボードの波越え(プッシュ/ローリングスルー)

浮力の大きいロングボードやファンボードは、そもそも沈みません。無理にドルフィンスルーをしようとせず、ボードに合った別の方法を使いましょう。
プッシュスルー(スルーアップ)
小さめの波なら、ボードを前に押し出して自分だけ波の下に潜る「プッシュスルー」が使えます。ボードのテール側を持ち、波が来た瞬間にノーズを少し持ち上げて波を通し、自分は体を沈めて波をやり過ごします。
ローリングスルー(タータルロール)
波が大きいときは、ボードごと裏返しになる「ローリングスルー」が有効です。波の直前でボードを抱え込むように裏返し、レールをしっかり握って波の下にぶら下がります。波が通過したら、再びボードを返して乗り直します。亀がひっくり返る姿に似ているので、タータルロールとも呼ばれます。
どのボードを使うか迷っている初心者は、ボード選びの段階から波越えのしやすさも意識しておくと安心です。
成功率を上げる「タイミング」の取り方

ドルフィンスルーは、手順よりタイミングで差がつきます。同じ動きでも、潜る瞬間がずれるだけで成功率はガラリと変わります。
潜るのは「波が崩れる直前」
目安は、波が自分の1〜1.5メートル手前まで来たとき。早すぎると浮いてくるまでに波が来てしまい、遅すぎると崩れた白波に巻き込まれます。崩れる直前に潜り始め、波が頭上を通る瞬間にいちばん深く沈んでいる、これが理想です。
波の大きさで沈める深さを変える
| 波のサイズ | 潜る深さ | 意識すること |
|---|---|---|
| ヒザ〜コシ(小波) | 浅めでOK | ノーズを軽く沈め前へ抜ける |
| ハラ〜ムネ | しっかり深く | テールを踏み込み水平に沈める |
| カタ〜頭以上 | 真下へ深く | 崩れる瞬間に合わせ垂直に潜る |
小さい波で浅く、大きい波ほど深く真下へ。波のパワーに応じて沈める量を調整するのがコツです。最初はヒザ〜コシの小波で、浅いドルフィンから練習すると感覚をつかみやすいですよ。
ドルフィンスルーができない3つの原因と直し方
「何度やっても弾き返される」という人は、たいてい次の3つのどれかに当てはまります。自分はどれか、チェックしてみてください。
原因1:深く潜れていない(テール踏み込み不足)
いちばん多い原因がこれ。ノーズは沈められても、テールの踏み込みが甘いとボードが水平にならず、波に浮かされます。前足や膝で、テールをしっかり「下に踏む」意識を持ちましょう。
原因2:腕の力だけで沈めようとしている
手首や腕でボードを押しても、大人の体重には勝てません。肘を伸ばし、上半身の体重をボードに「乗せる」イメージが正解です。力ではなく、体の重さを使うと驚くほど沈みます。
原因3:タイミングが早すぎる・遅すぎる
潜るのが早いと浮上時に波が直撃し、遅いと白波に巻かれます。波との距離を見て、崩れる直前に潜り始める。距離感は場数で身につくので、まずは安全な小波で回数をこなしましょう。
体力を温存するコツと上達のための練習法
沖に出るまでに疲れ果ててしまっては、肝心の波に乗れません。消耗を抑えて、効率よく上達するためのポイントを紹介します。
ムダな1回を減らす「波の選択」
すべての波を潜る必要はありません。崩れていない波や小さなうねりは、軽くパドルで越えられます。本当に潜るべきは、崩れて白く泡立った波だけ。波を見極めて潜る回数を減らすことが、いちばんの体力温存術です。
波がない日にこそ練習する
ドルフィンスルーは、波が穏やかなときの練習がいちばん上達します。腰くらいの深さの場所で、波がない状態でボードを沈める動作を繰り返しましょう。沈める→水平に保つ→抜ける、の流れを体で覚えれば、本番で慌てません。
呼吸とリラックスを意識する
水中で力むと、よけいに体が浮きます。潜る瞬間に軽く息を吐き、肩の力を抜くこと。リラックスできると沈みやすく、波の下でも落ち着いて通過を待てます。慣れれば、ドルフィンスルーは休憩がわりにすらなります。
ドルフィンスルーを安全に行うための注意点
ドルフィンスルーは沖に出るための技ですが、やり方を誤ると自分も周りも危険にさらします。最低限のマナーと安全のポイントを押さえておきましょう。
後ろや横に人がいないか確認する
潜った後、ボードが手元から離れると、後ろにいる人へ飛んでいく危険があります。潜る前に周囲をひと目確認し、人が密集している場所では特に慎重に。混雑したポイントでは、無理に突っ込まないことも大切です。
ボードは絶対に手放さない
波の力にひるんでボードを手放すと、リーシュコードで自分の体に跳ね返ってきたり、周囲の人に当たったりします。どんなに巻かれても、レールはしっかり握り続けること。これが自分と周りを守る基本です。
セットの波には無理をしない
一段と大きな『セット』の波が連続で来たときは、無理に沖を目指さず、いったん横へ移動してやり過ごす判断も必要です。体力に余裕がないままセットに突っ込むと、巻かれて流される原因になります。引き際を見極める冷静さも、立派なスキルのうちです。
よくある質問(FAQ)
ドルフィンスルーは初心者でもできますか?
はい、練習すれば必ずできるようになります。ただしショートボードが前提で、浮力の大きいボードでは難しいです。最初はヒザ〜コシの小さな波で、浅く潜る練習から始めましょう。いきなり大きな波で挑むと巻かれて危険なので、段階的にステップアップするのが安全です。
ボードが浮き上がって弾かれてしまいます。原因は?
ほとんどの場合、テールの踏み込み不足で深く潜れていないことが原因です。ノーズだけ沈めてもボードが斜めになり、波に浮かされます。前足や膝でテールをしっかり踏み込み、ボードを水平にして深く沈める意識を持つと改善します。
潜るタイミングがわかりません。いつ潜ればいい?
目安は波が自分の1〜1.5メートル手前まで来たときです。崩れる直前に潜り始め、波が頭上を通過する瞬間にいちばん深く沈んでいるのが理想。早すぎると浮上時に波が直撃し、遅すぎると白波に巻かれます。距離感は場数で身につきます。
ロングボードでもドルフィンスルーはできますか?
ロングボードは浮力が大きく沈まないため、基本的にドルフィンスルーには向きません。代わりに、ボードを裏返して波の下にぶら下がる『ローリングスルー(タータルロール)』や、自分だけ潜る『プッシュスルー』を使います。ボードに合った方法を選びましょう。
水中で息が苦しくなります。コツはありますか?
潜る瞬間に息を大きく吸い込むより、軽く吐くほうが体が沈みやすく安定します。波の通過はほんの一瞬なので、長く息を止める必要はありません。力まずリラックスすれば苦しさも減ります。不安なときは、まず浅い場所で潜る練習を重ねて慣れていきましょう。
ソフトボードでもドルフィンスルーできますか?
ソフトボードは浮力が非常に高く、ドルフィンスルーはかなり困難です。波が小さければ軽く沈めて越えられることもありますが、基本はプッシュスルーやローリングスルーで対応するのが現実的。スクールのレンタル板などで練習する場合は、無理せず波の小さい日を選びましょう。
まとめ|ドルフィンスルーで海が変わる
ドルフィンスルーは、沖に出るための最大の壁を越えるカギです。最後に要点を整理しておきましょう。
- ショートボードは5ステップで沈めて波の下をくぐる
- 最大のポイントは「テールの踏み込み」と「体重を乗せる」こと
- 潜るのは波が崩れる直前、1〜1.5メートル手前から
- ロング・ファンボードはプッシュ/ローリングスルーで対応
- 本当に潜るべき波を選び、体力を温存する
沖に出るまでの全体の流れはサーフィンのゲットアウト完全攻略で、土台となる漕ぎ方はサーフィン パドリングのコツで詳しく解説しています。自分に合うボード選びはサーフボードの種類と選び方ガイドもあわせてどうぞ。
最初は何度も弾かれて、海水を飲むかもしれません。でも、はじめてスッと波の下を抜けられた瞬間の気持ちよさは格別です。沖がぐっと近くなり、乗れる波もどんどん増えていきます。安全な小波から、焦らず練習を重ねていきましょう。



















