車のトランクからウェットスーツを引っ張り出したら、肩のあたりに白い点々が浮いている。これ、カビですよね?それとも乾いた塩?冬になると、こんな場面が急に増えます。
夏なら半日で乾いていたウェットが、12月以降は丸2日かかる。面倒で車に放置した翌週、開けた瞬間にツンとした臭いが鼻を突く。そんな経験、一度はあるのではないでしょうか。
困るのは、白い点が「塩」なのか「カビ」なのかで対処が真逆になることです。塩なら真水で流せば終わり。カビなら殺菌と乾燥が必要で、しかも落とし方を間違えると生地がボロボロになります。
この記事では、まずカビと塩と白い粉の見分け方から入ります。次に、生地を傷めずにカビを落とす3ステップ。さらに使ってはいけない洗剤、ニオイだけ残ったときの消臭、再発させない干し方まで順番に解説します。読み終えるころには、手元のウェットをどう処置すべきか迷わなくなるはずです。
なお、普段の洗い方や予防についてはウェットスーツの洗い方で詳しく書いています。本記事は「生えてしまった後」に絞ってお話ししますね。
目次
- なぜ冬のウェットスーツにカビが生えるのか
- カビか塩か|白い斑点・黒い点・白い粉の見分け方
- ステップ1: 真水で塩と汚れを抜く
- ステップ2: 薄めた酢で殺菌し、カビを浮かせる
- ステップ3: 二度すすいで完全に乾かす
- 使ってはいけない洗剤・漂白剤と、使ってよいもの
- ニオイだけ残った場合の消臭
- 再発させない干し方と保管|陸で確認できるチェックリスト
- よくある失敗パターンと対処法
- 落ちない場合|リペアと買い替えの判断
- よくある質問(FAQ)
- まとめ
なぜ冬のウェットスーツにカビが生えるのか

まず原因から押さえましょう。カビは「湿度・温度・栄養・時間」の4つが揃うと増えます。冬のウェットスーツは、実はこの4つが全部揃いやすいんです。
条件1: 半乾きのまま放置する時間が長い
カビの胞子は空気中のどこにでもいます。それが定着して増えるのは、湿度が70%を超え、しかも湿った状態が48時間以上続いたときです。ウェットスーツの生地は、ネオプレンのスポンジを薄いジャージ生地で挟んだ構造です。このジャージ層が水を抱え込みます。
夏なら表裏を干して半日で乾きます。ところが冬は気温が10℃を切り、空気が乾いていても水の蒸発が遅い。表側に1日、裏返してさらに1日。室内干しだと3日かかることも珍しくありません。この「乾くまでの時間」がそのままカビの猶予時間になります。
条件2: 密閉された空間に置く
車の中に放置する、防水バッグに入れっぱなしにする、使ったバケツに蓋をする。どれも「湿気が逃げない箱」を作っているのと同じです。密閉空間の中では湿度がほぼ100%で固定され、カビにとっては温室です。
特に冬は、週末に入って翌週まで車に積みっぱなし、というパターンが多いですよね。日中の車内は冬でも20℃前後まで上がります。夜は冷えて結露し、翌日また温まる。この繰り返しが一週間続けば、白カビが出るのに十分です。濡れた装備の車載については冬サーフィンの車トラブル対策でも触れています。
条件3: 暖房の効いた室内の温度
「冬は寒いからカビは生えない」と思いがちですが、実は逆です。カビが最も活発になるのは20〜30℃。暖房を入れた室内は、まさにこの温度帯なんです。室内干しのウェットは、湿った生地が暖かい空気に包まれた状態になります。
しかも冬の室内は窓を閉め切っているので、風が通りません。暖かい・湿っている・風がない。夏の浴室と同じ条件が、冬のリビングで再現されているわけです。
栄養は皮脂と汗と日焼け止め
ネオプレン自体はカビの栄養にはなりにくい素材です。カビが食べているのは、生地に残った皮脂・汗・日焼け止め・海の有機物です。首元、脇の下、股の内側にカビが集中するのはこのためです。真水で軽く流しただけでは皮脂が残るので、栄養は供給され続けます。
まとめると、冬のカビは「乾きが遅い」×「密閉」×「暖房」×「皮脂残り」の掛け算で起きます。連日入る人ほど乾かす時間が足りなくなるので、ウェットが乾かないときの回し方もあわせて参考にしてください。
カビか塩か|白い斑点・黒い点・白い粉の見分け方

ウェットスーツに浮く「白いもの」の正体は、実は4種類あります。それぞれ対処が違うので、落とす前に必ず見分けましょう。慣れれば30秒で判断できます。
| 見た目 | 正体 | 見分けるポイント | 対処 |
|---|---|---|---|
| 白い粉状・筋状。乾いた後に浮く | 塩の結晶 | 水で濡らすと消える。ザラザラした手触り | 真水ですすぐだけでOK |
| 白い綿状の斑点。ふわっと立体的 | 白カビ | 濡らしても消えない。カビ臭。指でこすると広がる | 殺菌+完全乾燥(本記事の3ステップ) |
| 黒〜緑の小さな点。輪郭がにじむ | 黒カビ | 濡らしても消えない。洗っても点が残る | 殺菌。色素は残るため見た目は完全には戻らない |
| 白いべったりした膜。ロウのような感触 | サーフワックス | 温めると柔らかくなる。胸〜腹に多い | ワックスリムーバーかぬるま湯で軽く |
| ラバー生地全体が白っぽくかすむ | 生地の白化(劣化) | 拭いても取れない。ひび割れを伴う | 落とせない。寿命のサイン |
見分け方1: 水をかける
一番簡単なテストです。白い部分に真水を少しかけてみてください。塩なら一瞬で溶けて消えます。カビは濡れても形が残り、むしろ色がはっきりします。ワックスは水をはじいて玉になります。
見分け方2: 臭いを嗅ぐ
乾いた状態で、白い部分に顔を近づけて嗅ぎます。塩は海の匂いか無臭です。カビは、押し入れや梅雨時の部屋のような、土っぽくてツンとした臭いがします。この「カビ臭」は一度覚えると間違えません。
見分け方3: 場所を見る
塩は水が垂れて乾いた跡に沿って、筋状に出ます。袖口や裾、縫い目の下側に集まりやすいです。カビは皮脂が溜まる場所に点状で出ます。首元の内側、脇、股、膝の裏。裏返したときに出ているなら、ほぼカビです。
黒い点については、もうひとつ注意があります。黒カビは生地の繊維に色素を残すため、菌を殺しても点は消えません。「落ちない=生きている」ではないので、無理にこすり続けないでください。判断基準は後半のリペアと買い替えの章で詳しく書きます。
ステップ1: 真水で塩と汚れを抜く
カビだと分かったら、いきなり殺菌に入りたくなりますよね。でも最初にやるべきは、塩と皮脂を抜くことです。塩や汚れが残ったままだと、殺菌液が生地の奥まで届きません。順番を守るだけで、仕上がりがまったく変わります。
用意するもの
ウェットが丸ごと沈む大きさのバケツかウォーターボックス(40〜60Lが目安)、水温30℃以下のぬるま湯、ウェットシャンプーか薄めた中性洗剤、柔らかいスポンジ、幅広のハンガー。この5つがあれば十分です。熱湯は絶対に使いません。40℃を超えると生地が硬くなり、接着面が剥がれやすくなります。
手順
- バケツに30℃以下のぬるま湯を張り、ウェットを裏返して沈める
- そのまま15分置いて塩を溶かす(水が白く濁れば塩が抜けている証拠)
- 水を捨て、新しい水にウェットシャンプーを規定量入れる(目安は水10Lに20ml前後)
- カビの出ている部分を中心に、スポンジで優しくなでるように洗う
- 首元・脇・股など皮脂が溜まる場所は、指の腹で軽く押し洗い
ここでのポイントは「こすらない」ことです。ゴシゴシやるとカビの胞子が周囲に広がり、ジャージ生地の毛羽立ちも起きます。あくまで塩と皮脂を浮かせるのが目的です。カビ本体はこの段階では完全には落ちません。それで正解です。
水温を30℃以下に守る理由
塩は温かい水の方がよく溶けます。だからといって40℃のお湯を使うと、ネオプレンの気泡がつぶれて保温力が落ちます。接着剤も熱で柔らかくなり、縫い目が浮く原因になります。冬の水道水は10℃前後なので、お湯を少し足して「ぬるいかな」と感じる程度が上限です。手を入れて温かいと感じたら、熱すぎます。
塩抜きが足りているかの確認
15分漬けた後の水を見てください。白く濁っていれば塩が抜けています。透明なままなら、すでに塩はほとんど残っていないか、逆に塩が固まって溶けきっていないかのどちらかです。袖口や裾の縫い目を指で触り、ザラつきが残っていればもう10分延長します。ここで塩を残すと、次の酢の殺菌が生地の奥まで届きません。
中性洗剤を使う場合は、台所用でも衣類用でもかまいませんが、必ず「中性」表示のものを選んでください。弱アルカリ性の粉末洗剤や、漂白剤入りのものは避けます。洗剤選びの詳細はウェットスーツシャンプーおすすめ6選にまとめています。
ステップ2: 薄めた酢で殺菌し、カビを浮かせる

ここが本番です。ウェットスーツに使える殺菌剤で、家にあって安全なのは「酢」です。酢の酸性がカビの繁殖を止め、臭いの元になる菌も抑えます。海外のウェットメーカーも、酢を水で薄めた液を推奨しています。
酢の濃度と時間
穀物酢または米酢を、水4に対して酢1の割合で薄めます。バケツに水8Lなら酢2Lです。濃すぎると酢の臭いが残り、接着剤への影響も無視できません。4倍希釈が、効果と安全性のバランスがいい濃度です。
裏返したウェットを沈め、20〜30分置きます。長く漬けても効果は上がらないので、30分で引き上げてください。カビの部分は、漬けている間にスポンジで軽く押さえると液が浸透しやすくなります。
酢の種類に注意
使うのは穀物酢か米酢の、何も加えていないものです。黒酢や果実酢は糖分と色素を含むので、生地に残って逆にカビの栄養になります。ポン酢やすし酢も同じ理由でNGです。クエン酸でも代用できます。水10Lに大さじ2杯を溶かせば、酢とほぼ同じ酸性になり、臭いが残らないのが利点です。
部分的なカビの場合
首元だけ、袖口だけといった部分的なカビなら、全体を漬ける必要はありません。同じ4倍希釈の酢水をスプレーボトルに入れ、カビの部分に吹きかけます。10分置いてからスポンジで軽くなで、真水で流します。これを2回繰り返せば、表面の白カビはほぼ落ちます。
酢で落ちないときの次の手
黒カビが点として残る場合は、色素が繊維に入っています。これは酢でも落ちません。菌が死んでいれば衛生上の問題はないので、見た目を受け入れるか、買い替えるかの判断になります。
海外では消毒用アルコール(70%)に10分漬ける方法も紹介されています。殺菌力は高いのですが、プリントの剥がれや接着剤の劣化が起きた例もあります。最終手段と考え、やるなら袖口の内側で必ずテストしてからにしてください。
ステップ3: 二度すすいで完全に乾かす
殺菌のあとは、すすぎと乾燥です。ここを雑にすると、酢の臭いが残ったり、せっかく殺したカビが数日で復活したりします。最後まで気を抜かないでくださいね。
すすぎは2回、水を入れ替えて
酢水を捨てたら、新しい真水を張ってウェットを沈め、全体を押して酢を押し出します。水を捨てて、もう一度。2回目の水に酢の臭いが残っていなければOKです。酢が残ると乾いた後にツンとするので、面倒でも2回やりましょう。
脱水は手で押すだけ
洗濯機の脱水は使いません。遠心力で生地が伸び、縫い目が裂けます。ハンガーにかける前に、ウェットを畳んで上から体重をかけるように押し、水を落とします。絞るのもNGです。ねじると接着面が剥がれます。
乾燥は「裏側から、風を当てて」
殺菌後の乾燥は、普段より丁寧にやります。まず裏返しのまま幅広ハンガーに腰で二つ折りにしてかけ、サーキュレーターか扇風機の風を当てます。冬の室内なら、風ありで裏側が8〜12時間。乾いたら表に返して同じく8〜12時間です。
風を当てられない環境なら、浴室乾燥か除湿機を使います。乾燥機にかけるのは絶対に避けてください。熱でネオプレンが縮み、二度と元に戻りません。乾かし方の具体的な道具と時間はウェットスーツ乾燥機は必要?で比較しています。
乾燥中に再発していないかを見る
殺菌後の乾燥中は、1日に1回はウェットを広げて確認してください。カビの出ていた場所に、再び白い綿のようなものが浮いていないか。カビ臭が戻っていないか。もし出ていれば、殺菌が足りなかったか、乾燥が遅すぎるかのどちらかです。その場合は乾かすのをいったん止め、酢の漬け置きをもう一度やってから、風量を上げて乾かし直します。
完全に乾いたかどうかは、脇の下と股の内側を指で押して確かめます。冷たさを感じたら、まだ内部に水が残っています。表面が乾いていても油断しないでください。ここがカビの再発ポイントです。
使ってはいけない洗剤・漂白剤と、使ってよいもの
カビを見つけると、つい「カビキラー」や「ハイター」に手が伸びますよね。でもウェットスーツにとって、これは最悪の選択です。何が使えて何がダメなのか、理由とセットで表にまとめました。
| 洗剤・薬剤 | 可否 | 理由 |
|---|---|---|
| 塩素系漂白剤(ハイター・カビキラー等) | × | ネオプレンの接着剤を分解し、縫い目が剥がれる。色が抜けて生地が硬化する |
| 酸素系漂白剤(オキシクリーン等) | △(非推奨) | 弱アルカリ性で高温使用が前提。常温・薄めでも接着面と色落ちのリスク。メーカー非推奨 |
| 消毒用アルコール(70%) | △(最終手段) | 殺菌力は高いがプリント・接着剤を傷める例あり。必ず目立たない場所でテスト |
| 熱湯・40℃以上のお湯 | × | 生地が硬化し、気泡がつぶれて保温力が落ちる。接着剤が弱る |
| 衣類用柔軟剤 | × | 油性成分が生地に残り、撥水を失わせる。かえって臭いの原因に |
| 粉末の弱アルカリ洗剤 | × | ジャージ生地の毛羽立ちと色落ち。すすぎ残りが臭いに |
| ウェットスーツ専用シャンプー | ○ | 中性で生地に優しい。皮脂と塩を落とす。殺菌剤ではない点に注意 |
| 中性洗剤(薄めて) | ○ | 台所用・おしゃれ着用の「中性」表示のもの。水10Lに5ml程度 |
| 酢(4倍希釈) | ○ | 酸性でカビの繁殖を止める。接着剤への影響が小さい |
| 重曹(消臭用) | △ | 殺菌力は弱い。消臭目的の漬け置きなら可。研磨にならないよう粉のまま擦らない |
なぜ漂白剤がダメなのか
ウェットスーツの縫い目は、糸だけでなく接着剤で貼り合わせてあります。塩素系漂白剤はこの接着剤を溶かします。一度剥がれると、水が入って冷たくなるだけでなく、自分で修理するのも難しい場所です。さらに塩素はネオプレンの表面を酸化させ、ゴムをパサパサにします。
「少しだけ薄めれば大丈夫」と思うかもしれませんが、接着剤へのダメージは濃度に関係なく蓄積します。カビを落とす代わりに、寿命を1年縮める。それが漂白剤を使った結果です。
ウェットシャンプーは「殺菌剤ではない」
もうひとつ誤解が多いのが、ウェットシャンプーです。これは皮脂と塩を落とす「洗剤」であって、カビを殺す薬ではありません。抗菌成分入りをうたう製品もありますが、それは「生えにくくする」効果です。すでに生えたカビには、酢の漬け置きを組み合わせる必要があります。
ニオイだけ残った場合の消臭
白い点は落ちた。でも乾かしても、なんとなくカビ臭い。そんなときは、生地の奥に菌の死骸や代謝物が残っています。見た目がきれいでも臭いが取れないのは、よくあるパターンです。
まず臭いの場所を特定する
消臭の前に、どこが臭うのかを確かめます。乾いたウェットを裏返し、首元・脇・股・膝裏の順に鼻を近づけてください。たいてい臭いは1〜2か所に集中しています。首元なら皮脂、脇なら汗、股なら皮脂と砂の混ざった汚れが原因です。場所が分かれば、全体を漬けなくても部分的な処置で済みます。消臭スプレーを全体に吹くより、原因の場所に重曹水を集中させる方が効きます。
重曹の漬け置き
水10Lに重曹を大さじ3〜4杯溶かし、ウェットを裏返して1時間漬けます。重曹は弱アルカリ性で酸性の臭い成分を中和します。カビ臭や汗の臭いにはこれが効きます。漬けた後は真水で2回すすぎ、しっかり乾かしてください。
酢の2回目
重曹で取れない場合は、もう一度酢の4倍希釈に30分漬けます。重曹と酢は役割が違うので、両方やると取れる臭いの幅が広がります。ただし同時に混ぜないでください。中和して泡が出るだけで、どちらの効果もなくなります。
消臭スプレーの使いどころ
ウェット用の消臭・抗菌スプレーは、乾かした後の仕上げに使います。洗い替わりにはなりません。濡れたまま吹いても菌の栄養が残っているので、数日で臭いが戻ります。順番は「洗う→殺菌→乾かす→スプレー」です。
臭いが完全に消えるまでには、洗って乾かすサイクルを2〜3回繰り返すこともあります。1回で取れなくても焦らないでください。回数を重ねるごとに確実に薄くなっていきます。
天日干しは消臭になるか
日光の紫外線には殺菌効果があります。でもウェットスーツにとって直射日光は、生地を硬化させて色を抜く最大の敵です。消臭のために日に当てるのは、1〜2時間が限度。それ以上は劣化のほうが早く進みます。基本は日陰で風を当てる方が、長い目で見て臭いは残りません。
再発させない干し方と保管|陸で確認できるチェックリスト

落とし方が分かっても、干し方が変わらなければ同じことの繰り返しです。ここでは、海から帰った日に確認できるチェックリストの形でまとめました。順番にチェックしていけば、冬でもカビを出さずに回せます。
海から帰った当日のチェック
- 車に積む前に、ビーチで真水をかけたか(できない場合はポリタンクの水で袖と首元だけでも)
- 濡れたウェットを密閉バッグに入れていないか(メッシュバッグかバケツに変える)
- 帰宅後3時間以内に、バケツで塩抜きしたか
- 裏返した状態で、幅広ハンガーに腰で二つ折りにしてかけたか
- サーキュレーターか扇風機の風が当たる位置にあるか
翌日以降のチェック
- 裏側が乾いたら表に返したか(裏→表の順を守る)
- 脇の下と股の内側を触って、冷たさが残っていないか
- 乾いたウェットを、暖房の効いた部屋の押し入れに入れていないか
- ファスナーを閉め切らず、少し開けた状態で吊るしているか
- 週に1回は風通しのいい場所に出しているか
このうち一番効くのは「帰宅後3時間以内の塩抜き」と「風を当てる」の2つです。全部は無理でも、この2つだけは毎回やってください。
ハンガーの選び方が8割
細い針金ハンガーに肩でかけると、肩に型がつくだけでなく、生地が重なった部分に水が溜まります。幅広の専用ハンガーに、腰で折ってかけるのが基本です。送風ファン付きのハンガーなら、冬でも一晩で乾きます。ウェットスーツハンガーおすすめ7選で、冬向けの乾燥グッズを比較しています。
保管場所は「暗くて涼しくて風が通る」
シーズン中は、玄関や廊下など暖房の効いていない場所に吊るしておくのが正解です。寒い場所の方がカビは生えにくい。暖かいリビングの隅に置くのが、実は一番危ないんです。オフシーズンの長期保管なら、完全に乾かしてから、クローゼットの中で衣類と離して吊るします。畳むと折り目に水分が残りやすいので避けましょう。
よくある失敗パターンと対処法
カビ取りの相談を受けていると、同じ失敗が繰り返し出てきます。先に知っておけば防げるものばかりなので、代表的な5つを挙げておきます。
失敗1: 塩だと思って放置したらカビだった
白い点を塩と決めつけ、次に入るときに海で流せばいいと放置。ところが翌週には点が増えて綿状になっていた、というケースです。対処は、白い点を見つけた時点で水をかけるテストをすること。30秒で済むので、必ずやってください。
失敗2: カビキラーで縫い目が剥がれた
浴室のカビと同じ感覚で塩素系を使い、翌週には脇の縫い目がパカッと開いた。これは本当に多いです。接着剤が溶けたので、自分で直すのはかなり難しくなります。対処は、使う前にこの記事の表を見ること。使ってしまった後なら、すぐに真水で何度もすすぎ、ショップに相談してください。
失敗3: 乾いたと思ったら中が湿っていた
表面を触って乾いていたので押し入れに入れたら、次に出したときにカビだらけ。原因は、脇と股の内部に水が残っていたことです。対処は、必ず内側の縫い目付近を指で押して冷たさを確認すること。冬は「乾いた」と思ってからもう半日干すくらいでちょうどいいです。
失敗4: 殺菌したのに、干す場所が同じだった
酢で殺菌してきれいになったのに、同じ暖かいリビングの隅に吊るして、2週間後にまたカビが出た。処置は正しくても、環境が変わっていないパターンです。対処は、干す場所を暖房の無い廊下か玄関に変えること。それが無理なら、サーキュレーターの風を当てる位置にだけは必ず置いてください。殺菌はリセットであって、予防ではありません。
失敗5: 酢を濃くしすぎて臭いが取れない
効果を期待して酢を原液に近い濃度で使い、乾いても酢の臭いが抜けなくなった。カビ臭が酢臭に変わっただけで、本人としてはあまり嬉しくないですよね。対処は、真水で3〜4回すすぎ直して、風を当てて乾かすこと。次回からは必ず4倍希釈を守ってください。
落ちない場合|リペアと買い替えの判断
ここまでやっても落ちないカビはあります。そのとき無理に落とそうとすると、生地の方が先に傷みます。「どこまで許容するか」「いつ買い替えるか」を決めた方が、結果的に快適です。判断の目安を表にしました。
| 状態 | 判断 | 理由 |
|---|---|---|
| 白カビが落ち、臭いもない | そのまま使用 | 衛生上の問題なし。干し方だけ見直す |
| 黒い点が数か所残るが、臭いなし・広がらない | そのまま使用 | 色素の跡。生地の機能には影響しない |
| 黒い点が広範囲。洗っても臭いが戻る | 買い替えを検討 | 生地の奥まで菌が定着。殺菌を繰り返すほど劣化が進む |
| カビと同時に縫い目が剥がれた | リペア後に使用 | 接着剤の劣化。小さい剥がれなら自分で補修可 |
| 生地がベタつく・硬い・ひび割れがある | 買い替え | ネオプレンの寿命。カビは結果であって原因ではない |
| 3シーズン以上使った起毛ウェット | 買い替え時期 | 保温力が落ちている。カビは買い替えのきっかけ |
縫い目の剥がれは自分で直せる
カビ取りの過程で縫い目の端が少し浮いたくらいなら、ウェット用のボンドで補修できます。乾いた状態で接着面を合わせ、重しをして一晩置くだけです。やり方はウェットスーツの修理方法に写真つきで載せています。10cm以上の剥がれや、脇・股など動く場所は、ショップのリペアに出す方が確実です。
なお、カビの出たウェットを中古で売る場合は、落とした後でも「カビ跡あり」と明記するのがマナーです。黒い点が残っていると、買い手は生きたカビと区別できません。殺菌と乾燥を済ませた旨を書き添えると、トラブルを避けられます。
カビは「寿命のサイン」のことが多い
3年目以降のウェットにカビが出やすいのには理由があります。生地の表面が劣化して細かい凹凸が増え、皮脂と水分が残りやすくなっているからです。つまりカビが出たこと自体が、生地の劣化を知らせているケースがあります。保温力が落ちている、パドルで肩が重い、と感じているなら、買い替えの判断材料にしてください。買い替えのサインはウェットスーツの寿命は何年?で7つにまとめています。
よくある質問(FAQ)
カビが生えたウェットスーツは、そのまま着ても大丈夫ですか?
一度は落としてから着ることをおすすめします。カビそのものが肌に触れると、かゆみや湿疹の原因になることがあります。特に首元や手首など、肌に直接当たる部分は要注意です。表面の白カビなら、この記事の3ステップで落ちます。黒い点が残っていても、洗って乾かした後なら着用自体は問題ありません。ただし広範囲に黒カビが出て、生地がベタついたり硬くなっているなら、劣化が進んでいます。寿命のサインとして買い替えを検討してください。
ウェットシャンプーで洗えば、カビは完全に取れますか?
軽い表面のカビなら、ウェットシャンプーの漬け置きで落ちることが多いです。ただしウェットシャンプーは汚れと皮脂を落とす洗剤で、殺菌剤ではありません。生地の奥に入り込んだカビの根や、黒カビの色素までは落とせません。カビを「落とす」のと「生えにくくする」のは別の作業だと考えてください。シャンプーで洗っても再発する場合は、薄めた酢の漬け置きを加え、乾かし方を根本から見直す必要があります。
黒い点が残ったままですが、カビは死んでいますか?
正しく洗って完全に乾かせば、黒い点はカビの「跡」である可能性が高いです。黒カビは生地に色素を残すため、菌が死んでも点は消えません。生きているかどうかは、乾いた状態で嗅いでカビ臭が残っていないか、しばらく使って広がらないかで判断します。臭いがなく広がらないなら、見た目の問題だけです。無理に落とそうとして漂白剤を使うと、生地が傷んで本末転倒になります。
酸素系漂白剤(オキシクリーンなど)はウェットスーツに使えますか?
おすすめしません。酸素系漂白剤は塩素系より穏やかですが、弱アルカリ性で40〜60℃のお湯と組み合わせて使うのが前提です。ウェットスーツは40℃以上のお湯で生地が硬化し、接着剤が弱ります。常温の薄い液で短時間なら生地が即座に傷むことは少ないものの、メーカーはいずれも推奨していません。どうしても試すなら、袖口の内側など目立たない場所でテストしてからにしてください。基本は薄めた酢かウェットシャンプーで十分です。
ウェットスーツのカビ取りをクリーニングに出せますか?
ウェットスーツを受け付ける専門クリーニングや、サーフショップ経由のメンテナンスサービスがあります。費用は上下別で数千円〜1万円前後が目安で、往復の送料が別途かかることが多いです。黒カビの色素は専門店でも完全には落とせないことが多く、「殺菌と消臭」が主な効果になります。3万円以上の起毛ウェットで広範囲にカビが出たなら検討の価値があります。安価なウェットなら、自分で落として買い替え時期を早める方が合理的です。
カビ臭が車の中に移ってしまいました。どうすればいいですか?
まず原因のウェットスーツを車から出し、カビを落として完全に乾かします。車内はシートやマットに湿気と臭いが残るので、晴れた日に全てのドアを開けて2〜3時間換気してください。フロアマットは外して天日干しが効果的です。それでも残る場合は、車用の消臭剤や重曹を置いて数日様子を見ます。濡れたウェットは今後、密閉できる防水バッグではなく、通気性のあるメッシュバッグかバケツに入れて運ぶと再発を防げます。
まとめ
冬のウェットスーツのカビは、乾きの遅さと密閉と暖房が重なって起きます。生えてしまっても、正しい順番で処置すれば生地を傷めずに落とせます。要点を整理しておきますね。
- 白い点は水をかけて見分ける。消えれば塩、残ればカビ
- ステップ1は真水と中性洗剤で塩と皮脂を抜く。こすらない
- ステップ2は酢の4倍希釈に20〜30分。黒カビの色素は残ることを受け入れる
- ステップ3は二度すすぎ、裏→表の順で風を当てて完全乾燥
- 塩素系漂白剤・熱湯・乾燥機は絶対に使わない。接着剤が死ぬ
- 再発防止は幅広ハンガー・腰で二つ折り・風通し・暖房の無い場所
- 広範囲の黒カビと生地のベタつきは、寿命のサインとして買い替えを
普段の洗い方と干し方はウェットスーツの洗い方|洗濯機・脱水はNG?、冬に乾かすための道具はウェットスーツハンガーおすすめ7選、そもそも乾かないときの回し方はウェットスーツが乾かない|連日入る時の回し方をどうぞ。
せっかくの冬の波、カビ臭いウェットで入るのはもったいないですよね。今日ウェットを引っ張り出して白い点を見つけたなら、まず水を一滴かけるところから始めてみてください。


















